Episode 1 転生乙女は妖精猫を三度断罪す
罪人来たりて蟹を食う
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く、キシリアが朝の仕込みを行っていた頃から中の呪詛を抜いていたのだろう。
それに気づかなかったとは、なんたる不覚。
「ニャッ、ニャニャッ! 見つかった!? どうしよう、マル兄」
「落ち着け、ポメ! そもそも見張り担当のテリアは何をしていたニャ!」
「何って、ここで一緒にカニ食ってたニャ?」
「「なんで見張り役がここにいる!!」」
「だって、兄者に任せておいたら満腹になるまで見張りかわってもらえないニャ? そしたら俺の分のカニがなくなるニャ?」
「「……そういえばそうだニャ」」
どこのコントだといわんばかりの会話だが、そんな愉快なお話を楽しんでいられる余裕はキシリアにはなかった。
なにせこちらは商売道具の食材をほとんど食い散らかされてしまっているのだから。
それにしても、その小柄な体のどこにこの大量の蟹が入ったのだろう?
ざっと見てだが、一匹が牛よりも大きなヘラクレスオオマンジュウガニの甲羅が少なくとも三杯は転がっていた。
――明日の仕込み、どうしてくれよう?
その背後に、黒の炎の幻が揺らめき燃え盛る。
いや、怒りに浸っている場合ではない……たとえキシリアがどう言い訳をしようにも、あの常連客たちが『本日はカニクリームコロッケありません』なんて状況を許すはずが無いのだから。
確実に詰め寄られて、泣きながら首をガクガクやられるだろう。
お客様は神様だが、うちのお客様は基本的に祟り神なのだ。
この不始末、ぜひともこの野良猫共にとってもらわなくては。
「それで? 遺言はもう考え終わったか?」
引きつった笑みを浮かべたままキシリアが死刑宣言すると……
「ふっ、我らこそは魔界の怪盗リージェン三兄弟! シルキーのキシリアよ、彼等の盗みを察知した勘のよさは褒めてやるニャ!」
萎縮して土下座でもするかと思いきや、三匹のうち、マル兄と呼ばれていた一番体の大きな三毛猫のケットシーが、指先で自分のヒゲをピンと弾いてふんぞり返った。
「だが、すでに遅し! 貴様の秘蔵していたヘラクレスオオマンジュウガニの脚はほとんど美味しくいただいたニャ!!」
続いてポメと呼ばれた虎猫のケットシーが、食べかけの蟹足を振りかぶりつつマルの台詞を継いで胸を反らす。
たしかにストックしておいたヘラクレスオオマンジュウガニの脚はざっと見て9割方食い荒らされており、残っているのは僅かな喰い残し。
もはや明日のカニクリームコロッケに使うのは不可能な状況だ。
――まったくもって、大損害だ。
保存していた蟹以外の食料も、すでに呪詛が抜けて劣化が始まっている。
中にはすでに劣化が完了してしまっており、いまから冷蔵庫に移しても間に合わないほど繊細な食材があるのだ。
……あぁ、出来立ての最高状態で
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