Episode 1 転生乙女は妖精猫を三度断罪す
罪人来たりて蟹を食う
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むろん、呪われたままの食材をそのまま調理することはできず、解呪用の聖水につけるなどして呪いを解いてからでしか調理が出来ない。
保存用の呪詛の源は瘴気であるため、そのまま体に取り込めば魔族といえども体調を崩してしまうのだ。
ついでにこの保存方法、解呪にそこそこ時間がかかるのである。
今のうちに解いておかなければ、おそらく明日の仕込には間に合わないぐらいに。
「さてと。 来月のカニクリームコロッケはゴリアテカワガザミを使おうかな? それともガンセキモズクガニを使おうかな?」
カニクリームコロッケは、キシリアの店で一番人気のメニューなのだが、材料のカニの味はいつも同じというわけではない。
あるカニは産卵前が一番美味しく、またあるカニは脱皮の寸前が一番美味しかったりもするのだ。
故にその季節で一番おいしいカニを使うのが、キシリアのこだわりであった。
ちなみに今使っているヘラクレスオオマンジュウガニは、魔王への献上品にも選ばれる高級カニなのだが、そろそろ産卵の季節に入るため、雄雌共に味が苦くなる。
しかも苦味の原因が強烈な神経毒であるため、店で扱うわけにはゆかないのだ。
「でも、まずは手持ちの材料を使い切ってからにしないとね」
そう呟きながら、地下倉庫の一角にある、カニを保存した呪蔵庫を開いたときだった。
「……え?」
キシリアの口から呆然とした声が漏れる。
彼女の視線の先では、人間が中に入って作業するたけの広さを持つ呪蔵庫の中で、三匹のネコが一心不乱に食料を喰い漁っていた。
「……ふぉぉぉ、カニ美味いニャぁっ! 最高級のヘラクレスオオマンジュウガニだニャ!」
「カニ美味っ、カニ美味っ、カニ美味っ! 全部食い尽くすニャ!」
「兄者たちばかりずるいニャ! こっちにもカニの脚をよこすニャ!!」
三匹のネコ、いや、ネコの姿をした妖精ケットシーたちは、成人男性の太股よりも太くて大きなカニの脚をしゃぶりつくすことで頭が一杯になっているらしい。
キシリアがきた事にもまったく気づいていない様子だ。
傍から見ればずいぶんと可愛い光景だし、キシリアもこんな情景で無ければ抱きかかえてモフモフしたいぐらいなのだが、どう考えてもそんな悠長なことをしていられる場合ではない。
「ちょ、ちょっ! な、何してやがるお前ら!!」
「「にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
ようやく我に返ったキシリアが大声を上げると、ケットシー三匹は弾かれたかのように一斉に悲鳴をあげた。
そして蜘蛛の子を散らすのかように呪蔵庫の中を走り回る。
抗呪服を着込んでいるとはいえ、呪蔵庫に満ちる瘴気の中をよくもまぁここまで元気に走れるものだと思ったが……よく見れば、呪蔵庫の中の呪詛がかなり薄い。
おそら
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