暁 〜小説投稿サイト〜
おいでませ魍魎盒飯店
Prologue 食の荒野に生まれ落ちて
私は魔界のお弁当屋さん
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で構成される妖精の一族である。
 本来は古い屋敷に宿り夜中のうちに様々な家事をこなす上級の家霊であるが、非常に気位が高く、家主が城の主にあるまじき愚行を行えば容赦なく追い出すこともあるという、おっかない女妖精たちだ。

 そんな彼女たちの特徴は、動くとシャラシャラと絹のような衣擦れの音がすることと、まるで制服のような裾の長いクラッシックなメイド服に、犬の耳と犬の尻尾。
 ただしいつものは人とかわらぬ姿をとっており、この犬の尻尾を人前に晒すのは彼女たちにとって胸を丸出しにするのと同じぐらい恥ずかしい行為である。
 この価値観は、同じく尻尾を持つ妖精であるコボルトやブラウニーでも同じであり、そのため彼女たちは尻尾を隠す長いスカートを愛用せざるを得ないのだ。

 ちなみに余談だが、尻尾がスカートから覗いているときは「お嬢さん。 ガーターベルトが外れていますよ」と話しかけて教えてあげるのが、紳士たる魔界の男たちの作法である。
 さもないと、恥をかかされた彼女たちからどんな報復があるか知れたものではないのだ。

「さぁてと。 とりあえず自分のメシ作ったら、明日の仕込みもやんなきゃな。 そろそろ他の種族向けのレシピも開発したいし。 あー、なんでこんなことになったんだろ」
 繰り返すが、キシリアの所属するシルキー族は、魔界の淑女である。
 こんな男臭い台詞なんぞ口にするぐらいなら、自分の胸を護身用のナイフで突いて自害するほど誇り高い生き物だ。
 それがなぜこんな口調なのかと言うと……じつは彼女、少し前まで男だったからなのである。
 しかも、この世界ではなく、異世界に住む二十歳過ぎた洋食屋の料理人。
 かつての名前を、"桐生(きりゅう) 慎吾(しんご)"と言った。

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