第九十話 ゲルマニア分裂
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ゲルマニア分裂の切欠はボヘニアの皇帝殺害事件だが、分裂の始まりはゲルマニア北東部の果て、ポラン地方からだった。
ポラン地方の地方都市クラフクにて、スラヴ系ゲルマニア貴族が行政を司るクラフク城を占拠すると、自らをポラン人と名乗り『ポラン王国』の独立を宣言した。
この独立宣言に、ポラン地方各地が申し合わせたかのようにポラン王国へ帰属し、一ヶ月としない内に帝政ゲルマニアにとってポラン王国は無視できない規模に拡大した。
この一ヶ月間、何故ゲルマニアは手を拱いて見ているだけだったかというと、ブランデルブルク辺境伯ヴィルヘルムを外した他の5人の選帝侯が、ヴィルヘルムの居ない隙にオーストリ大公アルブレヒトを次の選帝侯に決めてしまったのだ。
こうして、新皇帝アルブレヒト3世が誕生するわけだが、当然ヴィルヘルムは収まらない。
プラーカへ向かう道中、アルブレヒトが皇帝に選出された事に怒ったヴィルヘルムは、プラーカへの攻撃を命じた。
「直ちに戦闘準備だ! プラーカを火の海にしてくれる!!」
「お待ち下さい、叔父上」
フリードリヒが、怒るヴィルヘルムを諌めた。
「邪魔をする気か!」
「冷静になってください。今我らが攻撃を加えれば我々は逆賊です。何より我々には、長期の戦闘に耐えうる食料がありません」
「何だと、食料が!? ぐうう……!」
この時、食糧不足の事を始めて知ったヴィルヘルムは悔しそうに唸った。
「いかがいたしましょう。大人しく帰順いたしますか?」
「馬鹿を言うな! 誰がアルブレヒトなぞに!」
「では、このまま領地に戻りましょうか」
「戻ってどうする?」
「ポラン地方で大規模な反乱が起きましたし、このボヘニアにも反乱勢力が潜んでいます。このまま我々が領地に引っ込めば、鎮圧の為の兵力は不足します」
「なるほど、反乱鎮圧に手間取れば、アルブレヒトの名声は地に落ちるな。そうすれば、いよいよ俺の出番という訳か」
「全ゲルマニアの臣民は叔父上を新皇帝に推す事でしょう」
「ふんふん、ふふふふ……」
ヴィルヘルムの脳内には、皇帝の玉座に座った自分の姿が燦然と輝いてる姿が映った。
その妄想したヴィルヘルムの後ろに控えていたフリードリヒは、ヴィルヘルムの姿を冷ややかな目で見ていた。
(やはりこの人は、皇帝の玉座にのみ興味があって、臣民の事はどうでも良いのだな)
フリードリヒは改めて自分の正義を信じ直した。
……
数日後、ブランデルブルク軍とゲルマニア騎士団が、領地へ帰還の徒へついた事を知った新皇帝アルブレヒト3世は驚きの顔でその報告を聞いた。
「驚いたな、ヴィルヘルムの性格なら怒り来るって攻撃を仕掛けてくると
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ