番外2話『ローグタウンA』
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「ほら、さっさと次行くわよ?」
「へーい」
スタスタと上機嫌に歩くナミの後ろについたハントだったが、十字路に差し掛かったとき、なんとなしに視線を外して足を止めた。
「3段アイスだー!」
「おいおい、走るとおっことしちゃうぞ」
3段アイスが嬉しくて、はしゃいでいる一人の小さな女の子。もしかしたらそれを母親にでも見せたいのかもしれない。満面の笑顔で人通りの多い道を駆け抜けていく。
後ろから注意する父親もそんな娘の姿が可愛くて仕方ないのか、軽い注意をするものの本気で止めようとする様子はない。
実に微笑ましい光景だ。
ハントの目じりも自然と柔らかくなる。が、小さな子供というものは注意力が足りず、うっかりと失敗をしてしまうケースが珍しくない。
今回も、そう。
「あっ!」
男にぶつかった。アイスは無残にも男のズボンに全て付着してしまう。
「……あ……アイス」
一瞬でなくなってしまった3段アイス。女の子にとっては大きな幸せがあまりにも儚く散ってしまったことになる。目一杯に浮かぶ涙が女の子にとってどれだけの事件かが一瞬で見て取れる。
ここで本来なら後ろにいた父親が女の子をあやすなりして機嫌をとるのが普通なのだろう。もちろんアイスが服に付着して迷惑をかけてしまった男への謝罪もしなければならない。
父親がまずは男へ謝罪しようと駆け寄り、ぶつかってしまった男の顔を見たとき、申し訳なさそうな表情から恐怖のソレへと一変した。
「ス……スモーカー大佐! ど、どどどどうもすいません! うちの子が!」
背には海軍の『正義』を掲げ、2本の葉巻を口にくわえているその男はあまりにもいかめしい風貌をしていた。服が服なら海賊として見られてもおかしくはないほどだ。
――ルフィよりもある意味海賊っぽい顔してないか、あれ。
そんなどうでもいい言葉をハントは飲み込んだ。
ハントの経験上、海軍の人間には腐った人間しかおらず、背中の『正義』はお飾りでしかない。ハントは心の底からそう思っている。だから、今回も異様なほどに怯えを見せる父親からしてこの海軍大佐もろくな人間ではないのだろう。権力をかさにきて、好き勝手なことを吹っかけるに違いない。子供相手に大人気ない態度を見せるに違いない。
それを止めるべく、ハントが足を向ける。なにがあってもすぐに対応できるように徐々に彼の気配が研ぎ澄まされていき、見聞色の覇気すらも発動する。
スモーカーが女の子の頭に手を置いて、そこでハントの足が止まった。
――害意が……ない?
いかつい男の手に、女の子はびくりと体を震わせる。ハントが、自分の見聞色を信じられずにまた慌てて駆け出そうとして、だが次の光景にまたその足を止めることとなった。
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