第四話 〜対峙〜
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えば相当なものであった。
名剣と言われて渡されたその日に切れ味が気になり、家畜を斬り殺した事があった。
だが余りにも面白いように切れるものだから試しに兵士から奪った剣に振り下ろしつみた。
そしたらその剣は金属のぶつかり合う音と共に裂けるように真っ二つに切れた。
それ以来ずっとこの瞬間を想像しながら待っていた。
敵が自分の剣を受け止めた時、果たしてどんな顔をして死んで行くのかを。
それは恐怖なのか。
それとも驚愕なのか。
そして家畜ではない、同じ人間を切る感触。
羊班はそれら全ての期待をこの一振りにかけていた。
だが、結果はどうだ。
目の前の鉄鞭は俺の剣を全く通さないではないか。
めり込みもしていない。
一瞬羊班の剣から力が抜ける。
それを豪帯は見逃さなかった。
『はっ!!』
『ッ!?』
カキンッ
渾身の力で羊班の剣を跳ねあげる。
なんとか剣を握り締めて持ちこたえたみたいだが、体制を立て直す隙は与えない。
立て続けに斬撃を打ち込む。
キンッ
キンッ
キンッ
『っく!!』
辛うじて僕の斬撃を受け止めてはいるが、どんどん後ろへと押し込んでゆく。
しかし、いつまでもこの状態は続けられない。
生憎部屋は狭く、羊班のすぐ後ろには壁が迫っていた。
もう少しだ。
キンッ
ドンッ
『なっ!?』
『せいや!!』
体重を乗せて一気に振り上げる。
カキンッ
サクッ
どうやら名剣と言うのは本当だったようだ。
打ち上げられ、回転しながら宙を舞った羊班の剣は地面に吸い込まれるように突き刺さる。
勝った。
『…あぁ』
信じられないといった顔をしながら自分の剣を眺めている羊班に僕は鉄鞭のひっ先を向けた。
『ひっ?!』
さっきまでの威勢が嘘のような情けない声を出した。
幸い剣ではないから切られて死ぬ事は無い。
だが、それでも重量のある鈍器で殴られればそれなりに痛い思いをする。
それに、いくら鈍器とはいえ僕の加減次第でこの男を殺す事だってできる。
見るからに恐怖に怯えている羊班。
これがさっきまで大口を叩いていた人間の顔とは思えないくらい恐怖で顔を引きつらせている。
なんて情けないんだ。
でも、もし僕が同じ状況ならどんな顔をしているのだろうか。
やはり情けなく顔を引きつらせて僕のように相手から蔑んだ目で見られてしまうのだろうか。
そう思うと何故かこの男に対して同情の気持ちと申し訳ない気持ちが出てきた。
『お、お前!!俺に指一本でも触れてみろ!!親父が黙ってないぞ!!』
だが、この一言で気が変わる。
この男はこんな状況に置かれてもなお、潔よく負けを認めず自分の親の権力にすがり付いて逃げようとす
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