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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission7 ディケ
(9) キジル海瀑 A~ガリー間道
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数奇な縁で出会った同行人で同居人。カナンの地を共に目指す小さな相棒。

「――エル、手、繋いでいいか」
「え!? きゅ、急にどうしたの?」
「エルがイヤならいい」
「い、イヤじゃ、ない!  ……けど。ルドガーがどうしてもって言うなら、いいよ」
「じゃあ、どうしても、だ」

 ルドガーはしゃがみ、エルの手を取った。小さい。ルドガーの掌に載せてなお余りある、こんなにも小さな手。手だけではない。背丈も足も首も頭も、人体に大事な部分はどこも小さくて脆い。

(俺にとって大切なもの。何に替えても守り抜かなきゃならない女の子)




 そんな彼らを見守っていたユリウスがついに踵を返した。その背にローエンが声をかける。

「行かれるのですか」
「ああ。弟とも話せた。あまり長居してもいられない」
「宛てはあるの?」
「悪いがそれは秘密だ」

 むすっとするミラを、ミュゼがくすくすと隠さず笑った。

「じゃあな、ルドガー。機会があったら、バランとアルフレドによろしく伝えといてくれ」

 ――ユリウスは去った。まるで長期出張にでも出かけるような、日常が壊れる前と同じ声音。
 ルドガーはエルと手を繋いで並んで立ち、兄の背中を見送った。





 一行はキジル海瀑を出てガリー間道を進んだ。イラート海停に帰るには一度ハ・ミルを経由しなければならない。

「ローエン。さっきはありがとう。フォローしてくれて」
「何の。お助けすると先に口にしたのは私ですからね」
「正直メチャクチャ助かった。これからも、頼っていいかな」
「ルドガーさんが必要とあらばいつなりと」

 ローエンが芝居がかった礼を取ったので、ルドガーもつい笑った。


(さて、あともう一人)

 ルドガーは少しペースを上げ、ミラとミュゼに囲まれておしゃべりしているエルに声をかけた。エルと二人で話したいと告げると、姉妹は心得て列の後ろへ下がった。

「今日はごめんな。怖い思いばっかさせて」
「こわくなんかなかったもんっ」
「はいはい。エルは強い子だもんな。でも真面目な話、今日は俺がふがいなかったせいでかなりヤバイとこまで行ってた。今日だけじゃなくて明日からも、また同じようなことがあるかもしれない。俺も無敵じゃないからさ」
「うん……」

 エルの前に片膝を突く。エルの翠眼に映る自分はいつになく緊張している。

「エル。こんな俺だけど、まだ一緒に『カナンの地』に行くって約束、有効か?」

 エルはパチパチと瞳を瞬き、次いでぎゅっとリュックサックのベルトを握りしめた。

「ユーコーに決まってんじゃん! ゆびきりしたんだから、ウソついたらハリセンボンなんだからね」
「はは、そうだったな。うん。今日、みっともないとこ見
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