第二十九話 ダミー会社
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いる。ローエングラム公も総参謀長と顔を見合わせるばかりだ。
「ボルテック弁務官、何が起きたのです」
キルヒアイス提督の問いかけにボルテックがノロノロと顔を上げた。
「フェザーンの、自治領主府のダミー会社の所有者が、……全て変わっている……」
「ダミー会社?」
ボルテックが力なく頷いた。
ダミー会社? 嫌な予感がする。何処となく後ろ暗い犯罪の臭いのする言葉だ。ローエングラム公も総参謀長も不信感が顔に滲み出ている。僚友達も同様だ。ダミー会社を利用して何をしていたのだろう。地球教に対して送金だろうか。有りそうな事だが……。
「そのダミー会社は一体何なのだ、何に使っていた?」
ローエングラム公が問いかけるとボルテックは座り込んだままぼそぼそと話し始めた。
「フェザーンはダミー会社を利用して帝国、同盟の基幹産業、利権をフェザーンの支配下に置こうとしていたのです。そうする事で経済面からの影響力を密かに強めようとしていました」
支配下? 影響力を強める? また皆が顔を見合わせた。
「常に百社以上のダミー会社を使って狙いを付けた企業の株を購入していました。一社当たりにすれば最大でも五パーセントに届かない数字です、帝国にも同盟にも不信を抱かれる事は無かった、それなのに……」
「そのダミー会社の所有者が変わったということは……」
総参謀長が問いかけるとボルテックが力なく頷いた。
「取得した株、利権の所有者はダミー会社の名義になっていました。そのダミー会社の所有者が変わったということは取得した株、利権の真の所有者も変わったという事です」
そう言うとボルテックは立ち上がりまたコンピュータを操作し始めた。そして溜息を吐いた。
「ご覧ください。ヴァレンシュタイン総合警備がダミー会社の所有者になっています、つまり真の所有者は黒姫という事です……」
会議室の彼方此方から溜息を吐く音が聞こえた。
「一体どれだけの企業を所有していたのだ」
ローエングラム公の問いかけにボルテックがビクッと身体を震わせた。だが諦めた様な表情を顔に浮かべた。
「帝国では、ざっと百社です」
「私の知っている企業も有るかな」
「……例えばですが、ヴォンドラチェク重工業、キスク化学、コーネン……等です」
ボルテックの声が会議室に流れると彼方此方で溜息が聞こえた。ヴォンドラチェク重工業は兵器、エネルギー、エンジン等の開発を行っている帝国でも最大規模の重工業会社だ。キスク化学は住宅、建材、繊維、コーネンは帝国でも一、二を争う穀物商社。いずれも帝国の経済に大きな影響を持つ会社だろう。このレベルの会社が百社も有るのか……。
「同盟にも百社程度、同じような会社が有ります。それとフェザーンもです。フェザーン五大銀行の内上位三行は発行株数の五十パーセン
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