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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第二十九話 ダミー会社
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「……」
『彼に伝えてください、陰でコソコソするのは止めるようにと』
そう言うと黒姫が笑い声を上げた。公は釈然としない表情だ。

『では、この辺で失礼します。ああ今連絡が入ったのですが、ルビンスキーを確保しました』
「……」
失敗は無しか、皆が溜息を吐いている。また点数を稼がれたな、失敗が有れば少しは可愛げがあるのに……。ローエングラム公も詰らなさそうな表情をしている。

『閣下、喜んでいただけますよね?』
「……もちろんだ」
公が引き攣った笑みを浮かべた。
『私達は役に立つでしょう?』
「……そうだな、役に立つ」
益々笑みが引き攣る。
『では、これで……』

黒姫が消えるとローエングラム公が溜息を一つ吐いてから我々に視線を向けてきた、何となく困った様な表情をしている。例の私達が可哀そう、と言った言葉を思い出しているのかもしれない。作戦会議という雰囲気ではないな。黒姫め、全く碌でもない事をしてくれる。ローエングラム公がまた溜息を吐いた。黒姫と話をすると皆が溜息を吐く……。

「フロイライン、ボルテックをここに呼んでくれ」
「ボルテックをですか」
「黒姫の提案を提示してみよう。それに奴に訊きたい事が有る。黒姫が何を手に入れたのか、ボルテックに確認したい」

ボルテックがフェルナー国家安全保障庁長官に連れられて会議室に来るまで二十分程時間が有った。何とも間の悪い二十分だ。公も我々も何処か相手を窺うような表情で話をした。公は何を考えていたのだろう、やはり皇帝になるべきだ、皆がそれを望んでいるとでも思ったのだろうか。帝国軍三長官を誰に任せるか、だろうか……。

ボルテックがフェルナー長官に連れられて来ると公が黒姫の提案を話し始めた。ボルテックは興味深そうに聞いている。特に将来的には帝国の通商関係を統括する官庁を新設しその責任者にすると言う所には何度か大きく頷いた。フェルナー長官もボルテックを敵にするのではなく味方に取り込もうという狙いは分かったのだろう、不満そうな表情はしていない。

ボルテックは公の提案、いや正確には黒姫の提案を受けた。問題はその後だった。黒姫が自治領主府の地下から貴金属を手に入れた事、膨大な国債を手に入れた事を話すとボルテックは顔面を強張らせた。そして他にも何かを手に入れたようだがその正体が分からない事、“陰でコソコソするのは止めるように”と自分に警告した事を告げると物も言わずに手近にあったコンピュータを操作し始めた。

「まさか、……馬鹿な! これも、あれも、全部、変わっている! ……そんな、馬鹿な!」
ボルテックが悲鳴のような声を上げた後、呻きながら床に座り込んだ。蹲る様な姿で頭を掻き毟っている。どういう事だ? 何が変わった? 会議室に居る人間は皆、呆然として何が起きたか分からずに
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