第二十九話 ダミー会社
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い声を上げた。
『いざとなったら私が指揮しますよ。最後の戦争でしょうからね、想い出づくりに一個艦隊を指揮してみたいものです』
「本気か?」
公が呆れた様な声を出している。同感だ、本気で言っているのか? 我々と同じ立場で戦う? 艦隊の指揮などした事がない黒姫が?
『公の指揮下で戦う、お許しいただければ光栄ですね』
ローエングラム公が唸り声を上げている。これまで黒姫は協力者の立場だった、だが今度は指揮下に入ると言う。負けられない、負けるわけがない、そう思った。向こうは素人なのだ、今度こそ黒姫の上を行く。僚友達の顔を見た、ケンプ、ルッツ、ワーレン……、皆が厳しい表情を見せている。同じ思いを胸に抱いているに違いない。
「ではこうしよう、黒姫を艦隊司令官としメルカッツを参謀長とする。卿は艦隊の指揮経験は無いだろうからな、メルカッツを補佐として付けよう、どうか?」
公の提案に黒姫が笑みを浮かべて頷いた。
『それならば、お受けいたします』
『有難うございます。楽しみです』
メルカッツ提督と黒姫の返事にローエングラム公が嬉しそうな表情を浮かべている。多分黒姫を指揮下におけるというのが嬉しいのだろう。しかし強敵だ、黒姫の戦略家としての才能とメルカッツ提督の実戦指揮官としての力量、これが組み合わされた事になる。それにこれまでの遣り取りからするとメルカッツ提督はかなり黒姫を信頼しているようだ。二人の間に隙は感じられない、彼らの艦隊はこの銀河でも屈指の実力を持つ艦隊になるだろう。素人の指揮する艦隊では無い、だが望むところだ。
「ところで黒姫、卿がフェザーンで得たものだが」
『気になりますか』
「気になる」
ローエングラム公の返事に黒姫が笑みを見せた。またロキの微笑だ、どうにも嫌な予感がする。
『帝国政府が得た物はフェザーンとフェザーン回廊。それに時価総額で一兆帝国マルクは下らない貴金属、それとフェザーンが所有していた膨大な国債、……それに比べれば大したものではありません。ただフェザーンに置いておくのは危険です』
「……地球教に利用される可能性が有る、そういう物か」
公の言葉に黒姫が頷いた。
『おそらく一番危険でしょうね、そして来る遠征においてフェザーンを帝国の補給基地にするには必要不可欠な事だと思います』
ローエングラム公は納得がいかない様な表情をしている。黒姫が何を得たのか分からない事が不安なのだろう。確かに今回のフェザーン占領で帝国が得たものは言葉に出来ないほど大きい、金銭面だけではなく政治面、軍事面にまで及ぶ。黒姫が何を得たのかは知らないが、それに比べれば大したことは無いとは思うのだが……、やはり一抹の不安は有る。
『心配ならボルテック弁務官に尋ねてみては如何でしょう。彼なら私が何を得たか分かるはずです』
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