第二十九話 ダミー会社
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のだ」
ローエングラム公が慌てて黒姫を叱責した。皆もギョッとした表情をしている。言っている事は分かるがこんなところで言うべきではないだろう、それは口に出さない公然の秘密の筈だ。だが黒姫は笑みを浮かべたまま我々を見ている。間違いなく我々が慌てているのを面白がっている、だから卿はローエングラム公に根性悪のロクデナシと言われるのだ。
『隠さなくても良いでしょう』
「黒姫!」
またローエングラム公が黒姫を叱責した。
『まさかこのままずっと帝国宰相兼帝国軍最高司令官ではないでしょうね。そこに居る皆さんが悲しみますよ、このまま出世は出来ないのかって』
黒姫が悲しそうな表情を浮かべて我々の方を指差した。釣られたようにローエングラム公が我々に視線を向けてきた。何てことをするのだ! この根性悪のロクデナシ! 皆が慌てて顔を背けたり表情を隠そうとした、私もだ。キルヒアイス提督もフロイラインも困ったような表情をしている。
ローエングラム公も困ったような表情で我々を見ている。それは確かに我々だって出世をしたいし、顕職に就いてみたいという思いは有る。公が皇帝になれば我々にも帝国軍三長官職に就任する機会が訪れるだろう。もっとも黒姫を見ていると我々のような無能者にその資格が有るのかと落ち込む事もしばしばだが……。
『その帝国宰相兼帝国軍最高司令官という厭らしい肩書きはさっさと卒業することです、皆がそれを望んでいるのですから。私も閣下を陛下とお呼び出来る日が来るのを楽しみにしています。これは本当の事ですよ、そのために協力してきたのですから』
「……」
嫌がらせだな、間違いなく嫌がらせだ。黒姫は罪のない笑顔でニコニコしているがローエングラム公が返答できずに口籠っているのを見て喜んでいる。帝国宰相兼帝国軍最高司令官を厭らしい? ローエングラム公は簒奪を企む帝国一の不忠者で我々はそれに与する謀反人かもしれないが卿はそんな我々を嗤って喜ぶ宇宙一の根性悪のロクデナシだ。卿に比べたら私など間違いなくお人好しの善人だろう。
心の中で毒づいていると黒姫が公に話しかけてきた。
『そうそう、今度の戦いにはメルカッツ提督も参加します。提督の艦隊を用意していただけますか』
『黒姫の頭領! それは……』
『そろそろ戻る時ですよ、メルカッツ提督。もう十分に休んだ筈です』
『しかし……』
黒姫の声とメルカッツ提督の声が聞こえた。姿は見えないがメルカッツ提督もフェザーンに居るようだ。
「構わないが、大丈夫なのか。メルカッツ提督は気が進まぬようだが」
『大丈夫です』
「しかし……」
ローエングラム公が躊躇った。無理も無い、メルカッツ提督は必ずしも納得していない、戦意不足の艦隊など有っても邪魔になるだけだ。だがそんな不安を打ち消すように黒姫がクスクスと笑
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