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カルメン
第四幕その三
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第四幕その三

「あんたとはね。あたしは嘘はつかないし心が揺らぐことはないわ」
「わかってるのよ」
 カルメンはまた言ってきた。
「あんたはナイフを持っている。そのナイフであたしを殺すのに」
「馬鹿な、俺がどうして」
 ホセはそれは必死に否定する。本当に思ってもいないことだったから。
「俺がどうして御前を」
「それが運命だからよ。だから無駄なのよ」
「まだ間に合うんだ」
 ホセはカルメンの言葉を聞きはしない。ただ己の言葉を出すだけであった。
「俺は御前を愛している」
「あたしは違うわ」
「俺を・・・・・・もう愛していないのか」
「ええ、そうよ」
 はっきりと言ってきた。
「全くね」
「けれど俺は御前が好きなんだ」
 ホセは必死にカルメンに告げる。どうしてもその気持ちを抑えておくことが出来なかった。彼はもう己の心を保つことができなくなっていた。
「何でもする、何にでもなる。だから俺と一緒に」
「だから無駄よ」
 それでもカルメンは素っ気無い。
「あたしはもう」
「やったぞ!」
「ブラボーーーーーーーッ!」
 カルメンがまたホセを拒もうとしたその時。闘牛場から歓声が起こった。
「トレアドールやったぞ!」
「エスカミーリョ万歳!」
「終わったわね」
 カルメンはそれを見て闘牛場の方に足を一歩出した。それを見たホセの顔が歪む。その顔でカルメンに対して問い詰めるのであった。
「何処にいくつもりだ」
「答えるつもりはないわ」
「わかっている。あの闘牛士のところだな」
 ホセは険しい顔でカルメンに問い詰める。
「あいつのところに」
「そうよ、愛しているからよ」
「俺じゃなくてあいつをか」
「ええ、そうよ」
 カルメンはホセを見据えて言い切る。
「彼をよ。今はね」  
 その顔は真っ赤になっている。激昂しているからだ。それに対してホセの顔は蒼白になっている。その正反対な顔で言い合うのであった。
「俺はそうして御前に。捨てられるのか」
「故郷に帰るのね」
「嫌だ、俺は御前と一緒に」
「だからそれはないのよ」
 カルメンは動こうとはしない。
「何があってもね」
「じゃあ。俺はもう」
 遂にナイフを出した。カルメンの言葉通りに。しかしホセはそれに気付いてはいない。カルメンだけが気付いていることであった。
「このまま」
「万歳!」
「勝どきをもっとあげろ!」
 後ろでまた歓声が起こる。そうしてその中で二人の最後のやり取りが行われるのであった。
「これが最後だ」
「最後にするのね」
 カルメンは動かない。闘牛場に行こうと思えば行けるというのに。ホセはこれにも気付きはしないのだった。ここでも。
「俺と一緒にはならないんだな」
「その証拠に」
 指にはめていた指輪を取
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