第一話
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僕はフィーク。豊かな自然に囲まれた学業区、タリムのメインストリートの一角で店を開いている。魔法店といって、この世界では珍しくないが、この街にはここしかない。
「ごめんください、あら、今日はメルちゃんとロアちゃんいないのね」
うちの店には、僕の他に二人が働いている。あまり熱心では無いのが残念だが。
「いらっしゃいませ。二人とも来ないんですよね、きっとまたどっかでサボってますよ・・・・・・」
そう言って力無い笑みを返す。
「で、今日の用件は?もう火の魔法の強化は無理ですよ?これ以上強化しちゃうと魔術レベルになっちゃいます。国の許可証も要りますしね」
魔術は誰にでも使えるものではなく、使用者に素質が無いと使えないが、このおばさんは料理の火力が足りないからと言って魔法域の限界レベルまで簡単に強化してしまった。許可証があればきっと強力な火のキャスターになれるだろう。
「違うの、家の屋根裏を掃除しようと思ってね、風属性の魔法を新しく作ってもらおうと思って来たの」
「ああ、なるほど。じゃあおばさんの能力値はもう知ってますから検査は省いて・・・・・・えと、レベル7くらいなら余裕ですね、もう作っちゃいました」
「いつも仕事が早くて助かるわね、それじゃあまたね」
「ありがとうございます」
と、こんな感じで日常は過ぎていく。
後一時間ほど待ってあいつらが来なかったらどうしようか、と考えていた時に店の扉が開いた。
「お客様はーーー神様だーーー!!!」
店員一号。騒がしい担当のメルだ。
「あっ、フィークじゃん!あたしの家で何してんの?」
「お客様は神様という考えは古いしまずお前は客じゃない。あとここは僕の店だ」
「いいよいいよ遠慮しなくて!何?客1人しか来なかったの?あたしたち来る必要無かったじゃん!」
そうやって業務記録を見ながら不満を言い続けている。いや、給料もらってるんだから働けよ。
そういや、あたしたちと言っていたのにもう一人の店員ロアの姿が見当たらない。あいつ見た目はちっちゃくてかわいい愛玩動物みたいだから、また外で学生に愛でられているのかな。まあそのうち入って来るだろう。
そんな事を考えながら、魔法の錬成に必要な材料や備品を確認している時だった。
「あ、あの!魔術、作って欲しいんですけどっ!」
立派な制服に身をつつんだ女学生が、そう言った。
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