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なりたくないけどチートな勇者
5*見栄を張るのもほどほどに
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ナルミ。
しかしエリザ姫は彼を自分の近衛兵にすると勝手に決めてしまった。

そうまでしても彼を近くに置いておきたいのだ。
何たって伝説の種族の一人なのだから。

そこで、ふとあることを思い付き、彼女は掴んでいた手をはなした。

ガンッ!!

すると、ナルミの頭が勢いよく床に打ち付けられた。

さすがにこれには気付いて、素直に謝ることにした。

「す、すまん。」

だが本題は謝罪ではない。
もしもナルミが伝説の種族ならもしかしたら…
そう思い、質問した。

「と、そんなことより、ナルミ!
おまえは一体なんの職業についている!?」

すると彼は一瞬考え

「自分は、武士だ。俗に言う侍だ。」

こう答えた。
そう、ナルミは伝説の勇者“セタ・ソウジロウ”と同じ種族で、さらに彼と同じ職業なのだ。

「やはりそうか!やはりナルミはブシでサムライで人間なのだな!そうだろう!」

「…はい、そうですぁぅ!!」

またも姫はナルミの襟裳を掴み、振り回し始めた。
その顔には、喜びの表情が誰が見てもわかるほどに張り付いている。

ちなみに、ナルミは何度も頭を打って軽く悲鳴をあげているが、エリザの耳にはとどかない。

「ならやはりニホンとはバクフのことで、 伝説の勇者であるセタ・ソウジロウは実在したのだな!
そしておまえは伝説の勇者と同じ種族で同じ職業なのだな!」

確認とも質問とも取れる事を言いながら、エリザは未だにナルミを揺さぶっている。

だが、返事がないことに気付いて、揺さぶるのをやめてみてみると、

白目を剥いて気絶していた。

それをみて少し、彼女は冷静さを取り戻した。

とりあえず姫は、驚愕の事実と彼女の奇行とで呆けていた周りの隊長たちに指示を出した。

まずはゼノアにナルミを医務室まで連れて行くように指示し、他の者達に判別器の片付けとナルミを近衛隊に編入させるように指示、そして最後に彼女はゾーン爺に

「三日後にナルミを連れて王都にいくぞ。
他の護衛については任せた、私は準備に取り掛かる。」

王都に戻る事を告げた。
その言葉に驚いていてるゾーン爺を余所にエリザ姫は

「…ふふふ、私だけの二つのオーラを持つ人間の騎士。
だれも持っていない、漆黒のサムライ…ふふふ。」

静かに呟きながら、自分の部屋に戻っていった。
ただ、その姿がご機嫌なのだがとてつもなく不気味で、それを見た周りの者はみな軽く戦慄したという。

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