参ノ巻
守るべきもの
4
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「え!?」
あたしは部屋の障子に手をかけたまま声を上げた。速穂児が訝しげに問う。
「どうした」
「勾玉がない!」
あたしは懐を押さえて叫び声をあげた。いつも身から離さずにいた瑠璃色の勾玉がなくなっていた。一体、いつなくしたのだろう!?
「やだ落としてきたのかも!探さなきゃ!」
走り出そうとしたあたしの腕を速穂児が掴んだ。
「落ち着け。この暗闇だ。どうやって探すんだ」
「でも!」
「俺はおまえより夜目が利く。中に入って待っていろ。必ず持ってくる」
あたしが返事をするよりはやく速穂児は背を向けた。
「自分で探すから…速穂児!」
そう止めたにも関わらず、あたしの言葉など聞いていないように、痩せた背中があっという間に去って行く。
夜目が利くって言ったって、同じ人間、そんな大差ないでしょーが…。
あたしはふぅと息をつくと、言いつけ通り大人しく部屋に入った。
速穂児が不器用な優しさを持っているのはわかっている。でも、なんだかなー。
もっと、自分のために生きれば良いのに。
なんだか速穂児、生き急いでいるみたい。
生きるのって、理由が必要なのかな。誰かのためじゃないと、生きていけないなんてことはないと思う。
何て言ったら良いかわかんないけど…速穂児が、これからもっと沢山笑えるといい。心からの笑顔で。できれば、誰かの為じゃなく、自分のために。
あたしは内側から障子に凭れかかると、ふーと息をついた。
その時だった。
暗闇から、ず、と腕が伸びてきて一息にあたしの口を塞いだのだ!
あたしはざわと全身が総毛立った。
強く背を障子に押しつけられ、咄嗟に懐刀を探ろうとした手も即座に押さえ込まれる。
呼吸を塞ぐ手は、骨張った男のものだ。
夜。この佐々家で、出会い頭にあたしの口を塞がなければならないような人間が、あたしの部屋にいる…。
頭が、ものすごい勢いで回転する。
「瑠螺蔚姫、ですね」
掠れた声は、熱を帯びて思ったよりもずっと近くで聞こえた。
気持ち悪すぎて、わっと毛穴が波立つ。
知らない男が何故、あたしの部屋にいるのか。そしてなぜ、あたしを瑠螺蔚だと知っているのか。
あたしは無我夢中で男の腕を振り払った。
「あっ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ