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戦国御伽草子
参ノ巻
守るべきもの

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「え!?」



 あたしは部屋の障子に手をかけたまま声を上げた。速穂児が訝しげに問う。



「どうした」



「勾玉がない!」



 あたしは懐を押さえて叫び声をあげた。いつも身から離さずにいた瑠璃色の勾玉がなくなっていた。一体、いつなくしたのだろう!?



「やだ落としてきたのかも!探さなきゃ!」



 走り出そうとしたあたしの腕を速穂児が掴んだ。



「落ち着け。この暗闇だ。どうやって探すんだ」



「でも!」



「俺はおまえより夜目が利く。中に入って待っていろ。必ず持ってくる」



 あたしが返事をするよりはやく速穂児は背を向けた。



「自分で探すから…速穂児!」



 そう止めたにも関わらず、あたしの言葉など聞いていないように、痩せた背中があっという間に去って行く。



 夜目が利くって言ったって、同じ人間、そんな大差ないでしょーが…。



 あたしはふぅと息をつくと、言いつけ通り大人しく部屋に入った。



 速穂児が不器用な優しさを持っているのはわかっている。でも、なんだかなー。



 もっと、自分のために生きれば良いのに。



 なんだか速穂児、生き急いでいるみたい。



 生きるのって、理由が必要なのかな。誰かのためじゃないと、生きていけないなんてことはないと思う。



 何て言ったら良いかわかんないけど…速穂児が、これからもっと沢山笑えるといい。心からの笑顔で。できれば、誰かの為じゃなく、自分のために。



 あたしは内側から障子に(もた)れかかると、ふーと息をついた。



 その時だった。



 暗闇から、ず、と腕が伸びてきて一息にあたしの口を塞いだのだ!



 あたしはざわと全身が総毛立った。



 強く背を障子に押しつけられ、咄嗟に懐刀を探ろうとした手も即座に押さえ込まれる。



 呼吸を塞ぐ手は、骨張った男のものだ。



 夜。この佐々家で、出会い頭にあたしの口を塞がなければならないような人間が、あたしの部屋にいる…。



 頭が、ものすごい勢いで回転する。



「瑠螺蔚姫、ですね」



 掠れた声は、熱を帯びて思ったよりもずっと近くで聞こえた。



 気持ち悪すぎて、わっと毛穴が波立つ。



 知らない男が何故、あたしの部屋にいるのか。そしてなぜ、あたしを瑠螺蔚だと知っているのか。



 あたしは無我夢中で男の腕を振り払った。



「あっ
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