参ノ巻
守るべきもの
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高彬は、凄絶に笑っていた。口は優しく弧を描いているのに、目が。目が、笑っていない!
お、怒って…る!?
こ、こんな高彬、はじめて見る、かも、しれない…。
高彬は小さい頃、いくら川に突き落としても、竹藪に放り込んでも、怒ったりなんていうことはまずなくて、ただびーびー泣きながら、懲りずにあたしのあとをついてまわったものだった。
それは単に幼いが故だったのかもしれないけど、やっぱり高彬は声を荒げたりしない、そういう優しい性格なんだと思う。
その高彬が、怒っている。しかも、この上もなく。
あたしはなにも言えず、黙ったまま固まっていた。
「…瑠螺蔚さんは、何も心配しなくて良いよ」
高彬は厳かな声で言った。
「もう今夜は何もないと思うけど、一人で大丈夫?心配なら、僕が一緒にいるけれど。もちろん忍びもつける」
「あ、ううん、だいじょう、ぶ…」
「そう」
高彬はついとあたしから視線をそらせて庭を見た。まるでそこに見えぬ宿敵がいるかのように、一瞬瞳が激しい光を帯びたかと思うと、急にすくっと立ち上がった。
「わかった。それじゃあまた、明日」
高彬はさっと去って行ってしまった。
な、なんなの…!
あたしはなんだかどっと疲れて、肩で息をした。
すると、目の前にさっと帯が差し出された。
「…ありがとう」
確認するまでもなくその帯を持っているのは速穂児で、多分そこらへんに散らばっていたのを拾ってくれたのだろうと思う。
あたしはそれをぎゅっと握りしめた。
というか、ちょっと待ちなさいよと。
過激な速穂児やら高彬が怒ってくれたおかげで、当のあたしの気持ちはなんだか擁護にまわって置いてけぼりだったけれども。
つまるところ、あたしは襲われたのだ。
あたしはねぇ。
あたしは、ただ襲われて、これでもう嫁に行けないのナンだのと落ち込んで口を噤むような女じゃないのよ!
ふつふつと沸く怒りが、今更ながらにあたしの体を燃え上がらせる。男の背に庇われてばかりも性じゃない。
あたしの玉の肌に触れた仕返しは、ちゃーんと、してやるんだからね!結果的には大事にならなかったとは言え、こんなことしようとするようなロクデモナイ男はだいたい初犯じゃないはずよ。泣いている乙女が他にもいるはずよ。
あたしは段々気分が高揚してきて、ふんと
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