参ノ巻
守るべきもの
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は、速穂児が来てくれて、よかった…!
間一髪だった気がして、今更ながらに体が震えてくる。
「大丈夫か」
「大丈夫、じゃ、ない…」
目に涙が滲んだ。
怖かった。無我夢中の中で、最悪の事態が頭をよぎるくらいには、怖かった。
でも、あたしが今こんな惨めに体を震わせて泣いているのは、そんなことのせいじゃない。
悔しい。
どうして、兄上の名を呼んでしまったのだろう。
昔からあたしは兄上に助けて貰ってばかりで、もうそれがクセになっているとはいえ、もうどれだけその名を呼んでも手を差し伸べてくれる人はいないのだ。
兄上だけじゃない。今も、あたしは速穂児がいなかったらどうなってたか考えたくもない。柴田家であわやという時だって、川に飛び込んだ時だって、高彬に助けて貰った。
どうして、あたしはいつも人に頼るしかないんだろう。
せめて、自分の身は自分で守りたい。自分で守れるだけの力が、欲しい。
強くなろうと誓ったのに、全然、果たせてない。悔しい…。
「瑠螺蔚さん!」
聞こえるはずのない声がして、あたしは顔を上げた。障子の飛んだ入り口に、あたしよりも数段青ざめて立っている高彬がいた。
「高彬…なんで」
速穂児が場所を譲るようにすっと部屋の隅に下がる。
あ…もしかして、速穂児、高彬に知らせてくれたのかな…。
あたしは何故か慌てて弁解した。
「あ、えと、ごめんね!夜中に起こしちゃって!でも大丈夫だから、あの」
「大丈夫じゃない!」
高彬が、部屋に踏み入って、あたしの腕を掴んで引き寄せた。
「大丈夫なわけ、ないだろう?」
そう言ってあたしの涙を拭いた。
「ごめん。本当にごめん。佐々家内でまさか瑠螺蔚さんが狙われるとは思ってもみなかった。現状はわかっていたはずなのに…完全に僕の落ち度だ。謝って許されるとは思っていないけれど、本当に、ごめん…」
あたしはそれに面食らって慌てた。
「ちょっと待ってよ!なんで高彬が謝るの!?高彬のせいじゃ…」
「いや、僕のせいだ。もう、二度とこんなことはさせない」
そう言って、高彬はあたしの首もとをなぞった。
あたしは一瞬でぼっと火がついたように赤くなった。けどそれも一瞬で、高彬の顔を見た途端あたしの顔の熱は一気に冷めた。
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