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最期の祈り(Fate/Zero)
無題
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を自身の口で覆うことも、喉笛を噛みきる事も容易い。傷だらけのまま誰にも悟らせず、ただがむしゃらに手を伸ばし続けた愚者が切嗣だ。
そんな大馬鹿者を愛してしまったのが、シャルロットだった。
「切嗣がどんな過去を背負っているかは解らない。もしかしたら、昔好きだった人が居たかも知れない」
切嗣が何らかの過去を背負っているのは、薄々勘づいていた。ただ、あまり触れて欲しくは無さそうだったし、軽々しく触れて良さそうな物でも無かったので何も言わなかった。
だが、今は違う。彼と一緒にい、自分の殻を破ると誓ったのだ。
――恐らく、切嗣は自分から誰かに想いを告げる事も無ければ、受け入れる事も無いだろう。それは、一種の防衛反応であり贖罪だ。幸せを享受すればするほど、過去の罪を意識させられ、彼の心をやすりで削っていく。
思えば、彼に安寧の地など約束されていなかった。目の前に居る少女と祭りを楽しんだ時でさえ、彼の言いも為し得ない部位を、罪悪感という名の凶器がじわじわ彼を傷みつけたのだ。そもそも切嗣は自分が救済に値する人物だとも思っていない。別に、悲劇のヒーローを語る訳では無い。彼も表面的には救済を望んでいる。だが、無意識的に幸福を拒む自我があった。自分の行動を鑑みるなら、あの火事の中、たった一人の子供を救えただけでも過ぎたものだと。これ以上の何を望み得ようか、と。そう諦めていた。
全ての幸福や優しさを退け、ただ一人棘の中をあてどなくさ迷う。そんな楽園とは程遠い地獄こそが、彼に唯一用意された安寧の地なのだから。
そんな彼を救う方法など、限られている。奪い、支えるのみ。
「んぐっ!?」
切嗣の唇をシャルロットの口が覆った。
ん……
そのまま、彼女の舌が切嗣の舌に絡み付く。
抵抗は、出来なかった。
ただ、シャルロットは自分の想い通りに行動した。彼の舌を弄ぶ様に嘗め回し、ただその行為に没頭した。
一分程たったのち、呼吸をするためシャルロットが口を離した。漸く切嗣が言葉を話す。
「し、シャル……!?」
いや、動揺していて思考が追い付いていない。
切嗣はそういった色事と無縁だったかと言えば、そうではない。アイリスフィールを始め、舞弥とも口を付けあったことはある。慣れていると言えば、慣れている。
だが、シャルロットとのそれは、何かが違った。舞弥とも違う。アイリスフィールとですら、何かが違う。……いや、そうではない。切嗣はこの感覚に覚えがあった。そう、彼女と共に戦った最期の2週間……
しかし、彼の思考はシャルロットの二度目の接吻でうやむやになった。
――ねえ、切嗣。約束して――
シャルロットの手が、彼を地面に押さえ付ける。
――今度の闘い、僕が勝ったら――
強引に口を開けさせ、舌を再度入れる。
――解っているよね。其までは我慢してあげる。だから――

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