第二話〜王とは〜
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れにこのままでは孫権様のお命すら危ない状況。そこで指示を出さない方がよほど重罪と思われますが?」
そう言う江の眼には嘲りの色が灯っていた。
と、江の視線が別の方向へと向けられる。副官もそれにつられてそちらの方向を見ると、そこにはちょうど孫権と同じくらいの年の女子が立っていた。
「だ、誰だ!」
突然の来訪者に再びうろたえる副官。
しかし、江のほうは驚きもせず、ただその少女を見つめていた。
「…なるほど、いい眼をしています。貴女が甘寧ですね」
「………」
返ってくるのは無言。
そしてその少女は武器を構えると、副官たちの視界から霞のように消え去った。
「っ!?」
次に副官がその視界に彼女を捉えた時には既に孫権に得物を振りかざしていた。
敵に背後をとられてからずっと空気と化していた孫権は、突然のことに状況を飲み込めないのか、ただ呆然と突っ立っていただけだった。
「孫権様!」
副官が声を張り上げるが、敵の少女は得物を孫権に振り下ろしていた。
もうダメだ。
副官が内心でそんなことをつぶやいたとき、本来聞こえるはずのない鉄と鉄のぶつかり合う音が聞こえた。
「この状況に陥った原因は…お分かりですね?」
大剣を以て、孫権に迫る凶刃が受け止められている。その大剣の持ち主は問うた。
「…っ……あぁ、お前の進言を無視したからだろう?」
苦々しく彩られたその表情で、キッと江を睨みつける蓮華。
しかし江の首は横へと揺れる。
「違います。孫権様は桃蓮様や雪蓮のように成ろうとしておられる。それこそが原因ですよ」
そう言うと江は得物を全力で振り上げる。
華奢な体躯の甘寧は驚きの声を上げながら、勢いよく飛ばされる。
「母様や姉様を目指して何が悪いのだ!!」
孫権は激昂した。
それに対し、江は止めの一言を投げる。
「貴女では彼女たちのようにはなれませんよ。いくらあがこうとね」
「なっ!?」
そこには先ほどまで蔑んでいた男の姿があった。
その男は微笑みながら、孫権に声をかけるとゆっくりと少女の方に目を向けた。
「それにしても名乗りもしないとは…まぁ私も人のことは言えませんがね」
そう言うと江は大剣を力任せに振り切り、鎬を削っていた少女を吹き飛ばす。宙で一回転し、器用に着地した彼女の表情は明らかに驚愕に満ちていた。
「我が名は朱君業。お手合わせ願いましょうか。江賊頭領、甘興覇」
「…いいだろう。我が鈴の音は黄泉路に誘う道標と
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