第七章 銀の降臨祭
第一話 わたしが……まもる
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…戻るか……」
ジュリオの言葉に頷いた士郎は、もう一度、眼下の広大な森林を見下ろす。
「……やはり……勘違いか…………元々……ありえないことだしな……」
「……シロウ」
森を見下ろしながら、寂しげに……悲しげに呟くシロウの姿に、ルイズは胸を締め付けられるような思いに囚われる。そのまま士郎が森の中に落ちていくような気がしたルイズは、士郎の背に回した腕にギュッと力を込めた。
それは、士郎が落ちていかないように。
留めるために。
……自分の下から離れていかないように。
「どうしたルイズ?」
「……ううん……何でもない」
自身の腰に回されたルイズの腕に手を添えると、肩越しに何時もと変わらない笑みを向けてくる士郎。ルイズはそんな何時もと同じ笑みを向けてくる士郎の様子に、何故か不安が込み上げてくる。それを押し殺すように歯を食いしばると、淡い笑みを浮かべ小さく首を振った。
「すまない。不安にさせたか」
ルイズの淡い笑を見た士郎は、不安にさせたかと自分を戒めるかのように一度強く目を閉じると、少し困ったような苦笑を浮かべ、ルイズの頭を撫でた。
「…………ばか」
「ああ……確かに馬鹿だな」
ルイズは頭を撫でられながら、顔を士郎の背に押し付ける。
それは恥ずかしいから?
それとも嬉しいから?
それとも……泣き顔を見られないために……。
違う。
全然違う。
ただ……今士郎を見たら箍が外れそうだからだ。
士郎がいなくなるような気がして。
そんなありえない不安に流されるまま……。
行かないでと。
置いていかないでと。
一緒にいてと……みっともなく泣いて、叫んで、縋り付いてしまいそうになるからだ。
そんなのは絶対に嫌だ。
そんな……ただの女みたいなのは……嫌……。
例えそんなことをやってしまっても、士郎はきっと、笑うだけ。
何時もと同じ、困ったような笑顔でわたしの頭を撫でながら、「大丈夫だ」って言って……。
だけど、しない……そんなのはわたしじゃないから。
泣いて……叫んで……縋り付いて……そんな情けないのは嫌だ。
士郎は気にしなくても、わたしが嫌なんだ。
あ……そっか……違った。
……違った……んだ。
……『わたしは嫌』じゃない……そう……『わたしが嫌』……なんだ……。
わたしらしくないから……じゃない。
ただの女みたいになるのが、わたしらしくないからじゃないんだ。
ただ……ただ…………そんなただの女が……士郎に相応しくないから。
そんな普通の
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