第七章 銀の降臨祭
第一話 わたしが……まもる
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「…………金色の妖精?」
士郎は金色の妖精と口にした将校に話し掛けようとしたが、振り返った時には既にその若い将校は、天幕から出て行くところだった。士郎は、素早く天幕から出ると、若い将校の後を追う。
「待ってください」
「君は……『虚無』の使い魔か」
若いと言っても、それは将校としてはだ。
士郎が声を掛けた将校は、少し頭に白いものが混じっている男であった。
士郎に声を掛けられた若い将校は、士郎に気付くと訝しげに顔を捻らせる。
「はい。少しお聞きしたいのですが、金色の妖精とは?」
「ん? 聞こえていたのか」
「はい」
若い将校は、恥ずかしそうに指で頬を掻くと、苦笑を浮かべた。
「まあ、君ならいいだろう。私は直接彼らから話を聞いたんだが、その中で何人かが変なことを言っていたんだ」
「変な?」
「『金色の妖精に助けられた』と」
「金色の妖精……?」
士郎が訝しげな顔をすると、それを見ていた若い将校の苦笑が深くなる。
「その妖精は、信じられないほどに美しい女だったそうだ。特に金に輝く髪が美しかったと。まるで金を溶かして出来ているかのようだったとも言っていたよ」
「……金色の」
士郎が口の中で、金色の髪……美しい女……とぶつぶつと呟き、まさかと思った時、若い将校の声が届く。
「あと胸が凄かったと言う者もいたな」
「凄い?」
「えらく大きかったそうだ」
「なら違うか」
「? どうかしたか?」
若い将校に「なんでもありません」と首を振ってみせると、士郎は頭を下げ、去っていく。
士郎の姿が見えなくなると、若い将校も歩き出そうとしたが、不意にあっと声を上げると、しまったなと顔を歪めた。
「そう言えば言い忘れたことがあったな」
捕虜の中で、一人だけ違うことを言っていた男がいた。
「まあ……問題はないか」
捕虜の男は言っていた。
「……妖精は二人いる……か」
「……いい加減出てきたらどうだ」
若い将校から話を聞きだした士郎は、尋問が行われた天幕から遠く離れた森の中にいた。
空に見える満天の星空の明かりは、生い茂る木々の葉によって隠され。森の中は闇に満ちていた。誰かが木々の陰に隠れていたとしても、その姿を見つけることなど出来はしないだろう。しかし、士郎はそんな不可視の闇の中、何者かが隠れていることを確信した声で、その誰かに呼びかけた。
「……引きずり出されることが望みならば、そうするとしようか」
士郎が一歩足を踏み出そうとすると、闇の中から、一人の男が姿を現した。
土を踏みしめる音を響かせながら近づいてきた男は、葉の隙間から僅かに差し込んできた月明かりにその姿
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