第七章 銀の降臨祭
第一話 わたしが……まもる
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ける。話しかけられた男は、微かに顎を引いて頷く。
「だが。捕らえた奴らは、全員怪我一つない」
「…………」
「別にお前が嘘をついているとは思ってはいない。お前たちについて行った竜騎士隊も、同じ様なことを言っていたからな。示し合わせていたとしても、それをする意味もない」
「となると、奴らを助けた者がいるということですな」
長い髭をしごきながら、年老いた将校が会話に加わる。
「それもかなりの水の使い手のようですが。それが敵だとしたら……少し厄介なことになりますのぅ。どうされますかド・ポワチエ殿?」
並べられた椅子の中央に座る男。ド・ポワチエは顎を手で撫でている。
「ふむ……捕らえた竜騎士は何人だったかな?」
「二十七人です」
「……確か、貴様が落とした竜騎士の数は、百程だと言っていたな」
「はい」
無表情に小さく答えた士郎を、疑わしげな目でド・ポワチエが見上げる。
「ふんっ。本当は二十七人だったんじゃないのか」
「……」
「ちっ……まあいい。全員が全員記憶がないと言っているそうだな」
「そのようですな」
興味を失ったかのように、ド・ポワチエは士郎から視線を外すと、隣に座る長い髭を持つ将校に顔を向ける。
「奴らを助けた者が、敵だとしたら、味方のはずのアルビオンの竜騎士が知らないはずがない。ならば、奴らを助けた者が、必ずしも敵とは限らんだろう」
「ならばどうしますか?」
将校たちの視線が、ド・ポワチエに集まる。
視線が集まるのを感じたド・ポワチエは、にやけようとする顔を押し止めながら、重々しく頷くと、口を開く。
「放っておけばいい。水の使い手がいくらいたとしても、こちらには『虚無』殿がいるからな。どれだけ優秀な水の使い手がいたとしても、原型も止めないほど吹き飛ばせば回復の仕様もないだろう」
「それもそうですな」
「確かに! 回復する身体がなければ意味はない」
「…………」
はははははっ!! と笑い合う将校たちの傍で、士郎は表情を浮かべることなく立っている。将校たちの話す内容に、興味がわかないという訳ではない。ただ、その胸中で渦巻く激しい怒りを抑えるのに必死なだけであった。グッと結ばれた口元では、鈍い歯ぎしりが響き。握り締められた手には、自身の指が折れるほどの力が込められている。
「竜騎士どもは、何かの交渉に使えるかもしれん。一応それなりに丁重な扱いをしておけ」
「了解いたしました」
アルビオンの竜騎士の処遇が決定し、将校たちは天幕から出て行くため椅子から立ち上がり始める。
同じように、天幕から出ようとした士郎だが、不意に耳に入ってきた言葉に足を止めた。
「そう言えば、奴らが言っていた金色の妖精とは一体何だったのだろうかな?」
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