第二話 〜道中〜
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『…僕もそんな風になりたいな』
『なれますとも。いくら外見が良くとも大切なのは内に秘める器であります。それが大きければ大きい程に溢れ出るものは計り知れないものとなるものです。豪帯様も胸を張ればよろしいのですよ』
『うん…わかったよ』
そうだとも、背なんか一々気にしてるようじゃ大事なんか成せるものか。
自分は目指すならもっと大きな存在になりたい。
強く、優しく、そして見た者全てを虜にしてしまうような存在。
そう…あの方のように。
僕は懐の得物を握り締めた。
『大切にされているのですね』
凱雲が気付く。
『うん、これは僕の宝物だから』
そう、僕ら家族を救ってくれたあの方のように。
『…いつか鮮武様のように』
そう呟いた。
しかし僕はこの時凱雲が微笑ましくもどこか影を落としていた事には気づかなかった。
『そうだとも!!僕には器があるんだ!!あいつがなんて言おうと背なんか屁でもないんだ!!ざまーみろ!!』
そう声高らかに宣言する傍で凱雲が頭を抑えて大きな溜息をついたのは言うまでもない。
夜が深くなり、野営の為の簡易テントで僕は横になっていた。
凱雲は見張りをしてくれるのだと言って外にいる。
毎回毎回遠出の際は凱雲が寝ずに見張りをしていてくれる。
そもそも関の守将である父さんの副官が一人で護衛というのも変な話だが、この凱雲が"村に兵が押しかけても民が不安がるでしょう"、とあえて一人で行く事を提案したそうな。
確かにそうではあるが、街道がありはしても村を出れば賊に合うというのは良く聞く話である。
それなのに自分の一人息子を凱雲一人に任せるのだから父さんも相当凱雲を信頼しているのだろう。
しかし、たまに関での凱雲の訓練の様子を見る事があるが、ほとんど号令ばかりで、たまに兵と手合わせしても負ける所は見た事が無いが、イマイチ強者と呼ぶには迫力が無い印象だ。
ただ、本気を出したら強そう。
僕の認識はそのくらいだ。
そんな凱雲が外で見張りをしている間僕はというと簡易テントの中で明日に備えて布団に潜っている
よくよく考えれば凱雲は父さんの部下であって僕の部下ではない。
これまで凱雲本人が何も言わずにただ当たり前のごとく尽くしてくれていたから気づかなかったが、相当な事を僕はしてもらっているのではないか。
そう思いはしたが、仮に見張りを変わったとしても、僕が見張りを全うできるかは不安である。
確かにある程度関で父さんや武官の人達、凱雲から剣の腕は仕込まれていてそう簡単に賊にやられるとは思わない。
だが、本当の闘いを僕は知らない
あくまで訓練や修練の域を越えたものを見た事がない。
そう思うとやはり不安である。
『…僕もいつか戦場に出るのかな』
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