第百十七話 鬼左近その十
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「みだりに殺生を続けてはならぬわ」
「そういえば殿はこれまで多くの戦を経てきましたが」
丹羽が信長に言う。
「その戦の割りには人を殺してはいませぬな」
「戦は人を殺すものじゃ」
それはその通りだった。だがそれでもだというのだ。
「しかし無造作に殺していいものではない」
「奪うことも壊すこともしてはならぬ」
「左様ですな」
「そういうことじゃ。わしは前に進むが義教公とは違う」
天下を前に変えてはいくが決して無道はせぬというのだ。信長が求めるものはそうしたものではないからだ。
だから今も丹羽と信広に言うのである。
「そういうことじゃ」
「わかりました」
二人も信長の言葉に頷く、彼は決して無道をする男ではなくそれを許すこともなかった、だがその彼の行いを快く思わない者達もいた。
彼等は今も闇の中にいた、その中においてこう話していた。
「織田の領内の二十国は日に日に平穏になっています」
「武田や北条の治める国々もですが」
「天下から戦は減り平穏になろうとしています」
「しかも治まってもきています」
「これでは」
「わかっておる」
闇の中央から老人の声で周りの声に対して返事が来た。
「そのことはな」
「では長老、ここはどうされますか」
「このままでは我等の闇が弱まりかねませぬ」
「色が世を包めばそれだけ」
「闇が消えますが」
「色、光の中心じゃ」
老人の声はそこだと指摘する。
「そこを消すのじゃ」
「というと今は青ですな」
「織田家の青ですか」
「それを消しますか」
「その青の軸があの男よ」
老人の声がこう言うとだった。
周りの声達も納得した様に口々にその声に応えて述べた。
「織田信長ですが」
「やはりあの男ですか」
「あの男をどうすべきか」
「それですな」
「日輪を消せばよい」
老人の声はここでは簡潔に述べた。
「それだけで違う。
「ですな、確かに」
「あの男が日輪なら日輪を消せばいいこと」
「光が消えれば後は闇があるだけ」
「ならばですな」
「うむ、織田信長さえ消せばよい」
また言うのだった。
「さすれば天下の色の軸が消え闇の世となる」
「しかしあの者に隙はありませぬ」
「j奔放な様で常に何者かが傍に幾人もいます」
「術も鉄砲も当たらぬ場所にばかりいる上に常に動き的にできませぬ」
「かなり厄介です」
「しかも周りは忠義の者ばかりよ」
信長がそうしたことも見て用いているからだ。織田家の主への忠義はかなり強いものであるのだ。
その為隙がなくそれでなのだ。
「篭絡も出来ぬな」
「他の家の大名達もそうですが」
「あ奴は特にですな」
「狙えませぬ」
「しかし隙は必ず出来る」
このことは間違いないというのだ、老人の声は確信さ
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