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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第七話「紅髪の少女 × 金髪の少女 = 相互反発」
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辱だけは絶対に許さない。――決闘を申し込むわ、エリスファーレンガルト。そこの二人も」


 クレアはいま一度、地面を鞭で叩き、エリスに指を突きつけた。


「わたくしもですわ、クレア・ルージュ。ローレンフロスト家を愚弄する者には復讐の牙を――我が家の家訓ですの」


 プラチナブロンドの髪をかきあげ不敵に微笑むリンスレット。


 二人の口上を聞いたエリスは剣の切っ先を俺からクレアたちに向けた。


「いいだろう。逃げたと言われてはそれこそ誇りある風王騎士団の名折れ。その決闘の申し出、受けてやる。正直、君たちレイブン教室の狼藉は目にあまると思っていたところだ」


「学院内での私闘は禁じられているのでは?」


 ん? 学院内?


「学院内での私闘はな。むろん、ここでやりあうつもりはない」


 なるほど、学院外ならOKということか。私闘そのものを禁じたら必ずどこかで暴動が生じる。なら、あらかじめ制約を設けることでガス抜きをしようということか。誰が考えたのやら、この決まりは。


 脳裏に不敵に笑う婆さんの姿を思い描いていると、エリスはクレアに向き直った。


「時刻は今日の深夜二時。場所は〈門〉の前だ。対戦形式はそちらで決めろ」


「なら三人制でどう?」


「……いいだろう」


 エリスはチラッとこちらに視線を向けると大仰に頷いた。剣を収め、踵を返して去っていく。傍らの二人は俺たちを一笑してからエリスの後を追っていった。なんとも小者臭が漂う奴らだな。


「ふん、あいつら絶対に後悔させてやるんだから! とくに姉さまを侮辱したあの髪の短いやつは絶対に許さないわ!」


「いい機会ですわ、騎士団の連中は前々から気に入らなかったんですの」


「リンスレット、足手まといにならないでよ」


「あら、それは私の台詞ですわ」


 やれやれ、ここでも言い合いか。案外キャロルの言っていた、二人は仲良しという話は本当なのかもしれないな。


 苦笑しているとクレアが腰に手を当てて、ビシッと俺を指差した。


「ま、そんな訳だから、早速アンタの力を見せてもらうわよ!」


「……ああ、まあ程々に善処しよう」


 いくら風王騎士団とはいえ、相手は学院生の少女。命を懸けた本当の戦場というモノを知らない彼女たちを相手に本気を出したら、過剰防衛になってしまう。


 あ、なら枷を付けるか。それなら本気で戦えるからな。


 こと戦いではあまり手を抜きたくないため、この案はまさに天啓。早速、脳内で術式を構築しながら、俺は二人と一旦別れて帰路についた。


 大人気ないことをしてしまったと、自己嫌悪に陥るのはまた別の話で
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