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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第七話「紅髪の少女 × 金髪の少女 = 相互反発」
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 白銀の毛並みをした美しい狼は全身から凍えるような冷気を発していた。


「あれが、リンスレットの契約精霊か……」


「はい。リンスレットお嬢様の契約精霊、魔氷精霊のフェンリルですわ」


 キャロルの言葉に頷く。原作にも出てきたな、あの狼。


 しかしまた大層な名前を付けたものだ。


 フェンリルといったら、北欧神話に登場する悪神ロキと巨人族のアングルボザとの間に生まれた巨狼だ。北欧神話最大の怪物と言われ、神々でさえ一時しか捕縛できず、ついにはラグナロクで主神オーディンを呑みこんでしまう。


 まあ、狼の中ではメジャーな部類だからな。しかしこの世界に神話ってあるのだろいか?


 一人首を捻っている中で事態は着々と進んでいった。


「ふん、相変わらず毛並みだけは立派な犬ね」


「ま、また犬って言いましたわねっ、この残念胸! ローレンフロスト家の侮辱だけは絶対に許しませんわっ!」


「誰が残念胸よ! ――来なさいスカーレット!」


 クレアが地面を叩くと、渦巻く炎の中から火猫が現れた。


「フェンリル!」


 リンスレットの声に応えるように咆哮し、スカーレットに飛びかかる。スカーレットも迎撃するため低く身構えた。


「……いつもこうなのか? このお嬢様たちは」


「はい、お二人は大変、仲好しなんですよ」


「仲良しね……」


 二匹の精霊は跳躍し、空中で激突する。相反する属性同士がぶつかり合い、周囲は激しい嵐となって吹き荒れた。


「まったく、血気盛んなお嬢様たちだ……」


 さすがにこのまま見学するという訳にもいかず、俺はため息とともに飛び出した。丁度そこはフェンリルとスカーレットの激突地点。


「ちょっ」


「えっ」


「きゃっ」


 クレア、リンスレット、キャロルが声にならない声を上げた。


 既に攻撃体制に入っていた精霊たちは攻撃を中止することも軌道を反らすことも出来ず、フェンリルは鋭い牙を、スカーレットは燃え盛る爪を振るった。


 俺は冷静にそれらを見据える、リンスレットには右手を、フェンリルには左手を差し向けて脳内に凍結保存していた圧縮呪文を唱えた。


「――凍結解放、〈対物障壁〉展開」


 両の平から直径一メートル程の魔方陣が展開され、スカーレットたちを弾いた。神威供給を遮断して魔方陣を消し、ジト目でお嬢様方を見据える。


「喧嘩するのはいいが、もう少し考えてやれ。周りに被害が出るところだったぞ」


「だって、この泥棒犬が……っ」


「でしたら、この残念胸が……っ」


「なによっ」


「なんですの
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