第七話「紅髪の少女 × 金髪の少女 = 相互反発」
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と、そこへ聞き慣れつつある声が聞こえてきた。
紅いツインテールの髪を靡かせたクレアが怒濤の勢いでこちらに向かって走ってくる。
「人の契約精霊をなに誘惑してるのよっ、この泥棒犬!」
「だ、だだ、誰が泥棒犬ですか! それに誘惑だなんてしてませんわ!」
「そうだぞ、クレア。なにか勘違いしてないか? ただ友達になっただけだ」
「アンタは黙ってな――と、友達ですって!? あ、あたしでさえまだなのに……」
なぜか絶句するクレア。後半の方はもごもごしていて聞き取れなかった。
クレアには会う度に勘違いをされているような気がするな。心労が耐えん。
この世界に胃薬ってあったかな、と現実から目を反らしていると。
「やっぱり泥棒犬は泥棒犬ね……リシャルトもリシャルトよ。あたしを差し置いてリンスレットと友達になるなんて……」
フフフ、と低い声で笑うクレアからは言い知れない恐ろしさを感じた。
「そうよね……いつも甘い顔をしているから悪いんだわ。ここはどちらが主人か、一度キッチリ教育しないと。ついでにそこの泥棒犬にもリシャルトが誰のものなのか教えてあげないとね……」
お馴染みの炎の鞭を取り出し、ビシッと地面に叩きつける。
「ですから、誰が泥棒犬ですかっ!」
「なによ、あんたの家の家紋は犬じゃない」
「なっ――ローレンフロスト家の家紋は誇り高き白狼ですわ!」
「白狼? チワワの間違いなんじゃないの?」
「――っ! 言ってくれますわね……」
低い声で呻いたリンスレットの辺りに霧のようなものが立ち込める。それに伴い空気の温度が一気に下がった。
「そういうあなたはリシャルト様を契約精霊だと言いますけど、ご本人は違うと仰っていましてよ?」
「そ、それは! リシャルトが認めないだけで――」
「あら、なら精霊契約は結びましたの? 精霊刻印は?」
「うっ」
当然の質問にたじたじとなる。リンスレットは追い討ちをかけるように言葉を続けた。
「そもそも人間を相手に精霊契約というのが可笑しな話ですわよね」
ついにクレアの表情が固まった。怒気に呼応して紅い髪が逆立つ。
「これ以上の話し合いは無駄のようね」
「そのようですわね」
風が渦巻き、リンスレットの髪が舞い上がった。
――凍てつく氷牙の獣よ、冷徹なる森の狩人よ!
――いまこそ血の契約に従い、我が下に馳せ参じ給え!
リンスレットが召喚式を唱えると、激しい氷の嵐が吹き荒れる。渦巻く氷の嵐の中から顕現したのは一頭の狼。
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