46:救ってみせろよ
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とだけ言って、それを最後に黙り……あとの全ての判断を、ユミルにゆだねた。
ユミルは一拍置いて、俺の手をじっと見つめる。そして己の手を、俺の手に重ねんと動かし……そしてあと一歩のところで止まる。
その指は、小刻みに震えていた。不安げに、もう一度俺を見上げる。
俺はその手を握ってやることはせず……しかし「だいじょうぶだ」と意思を込めて、微笑んでみせる。
それを見たユミルの瞳がまた少し見開き、すぐに意を決した様に引き締まる。
…………おずおずと指先が俺の手に一度、二度触れ。そして三度目に指先同士が重ねられ……それはゆっくりと手のひら全体へ。
手を完全に重ねたユミルが小さく、しかし長い長い息を吐く。
俺は、その手を握る。
小さく、されど確かに温かい、人肌の手。
それは、ユミルが死神などではなく……一人の人間である、なによりの証。
それが今、直に俺へと伝わっている。
「………………――キリト」
手をしっかりと握られたユミルは、澄んだ響きで小さく俺の名を呼び、再度俺を見上げた。
……すると。
ゆっくり、ゆっくりとその表情に変化が現れた。
ずっと強張っていた眉が下がり、どこまでも透き通る翠の目が柔らかく細められる。
――それを見届けながら、俺は……その表情が、笑顔に変わればいいな、と無意識に祈っていた。
その願いに応えるように、どこからか夜の微風が吹き……
ユミルの、それは綺麗な金の髪が軽く舞い、その可憐な顔を彩った。
その姿に似合わせるように。
最後に、唇の口角もゆっくりと上が――
どすっ。
――その時、今、聞こえてはいけない音が鳴った。
「…………え?」
俺がそういうのも束の間、
「――……う、あっ……?」
――その時、今、聞こえてはいけない声が聞こえた。
ユミルの、肺の中の全ての空気を吐いたような、苦悶の声。
同時に、その小さな体がビクンと小さく跳ね、その衝撃で繋いでいた手が外れる。
ユミルと目が合う。互いに、事態が飲み込めぬ見開いた視線を交換し合う。
……と、気付けば俺の視界に、ユミルの背後から離れた場所に、一人の人影があった。
俺の目はユミルにピントが合わせられていて、その影が誰か分からない。
ふと、嫌な予感がして……少しだけ、視線を下に下げ………………そして絶句した。
――その時、今、見えてはいけないものが、見えていた。
「――クッハハッ……アッハハハハッ!! やった、やったぜ!! ついに俺ァ、死神を討ち取ってやったぜェッ!!」
――その時、今、聞く事は無いと思っていた笑い声が聞こえた。
その手には、長い長い棒が握ら
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