46:救ってみせろよ
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最期の瞬間に俺に言おうとしていたのかと、今でも不安に駆られることがある。……しかし、真の意味で、その真相を知る機会はもう二度と訪れはしないのだ。決して。
そう思い知らされる度に、俺は……
「つら過ぎて叫びたいよな。泣きたいよなっ……」
その現実を突きつけられる度に思い出す。
かつて、彼女を生き返らせる為だけに息をして、自暴自棄になっていた自分を。
その果てに、それは叶わぬ願いだったと知り……雪振る夜の森の中で一人、壮絶な喪失感と悲しみに絶叫し、無様に雪を掻き毟りながら転げまわっていた自分を。
「苦しいし、寒くて、悲しいよなぁっ……」
気付けば、俺は歯を食いしばり体も細かく震えさせていて、いつのまにか強くユミルの体を抱き締めていた。
……逆に、俺がユミルに縋るように。
震える俺の指が、薄い布越しにユミルの柔らかな二の腕に深く喰い込んでいるはずなのに、ユミルはそんな俺から逃げようとせず……
「…………キミも……ボクと、同じなの……?」
俺の胸の中でユミルは、小さく言った。
「ああ……だから、よく分かるよ……」
サチの事を思い出し、鼻の奥がツンと痛む声で言う。
すると少しだけ、その身が俺に寄りかけられた……気がした。
「だったら、ボク達のような人間は、どうすればいいの……? キリトは、知ってるんでしょ……? 教えてよっ……」
その体からはもう、怒りの類の噴気が消えていた。
まるで水を撒かれた炭火のように、緩やかな熱さの残る小さな声で俺に語りかけていた。
「俺は……正直、今でも俺はその答えを見つけられていない。……だけどな」
ユミルを見下ろす。
「……だけど、俺とお前は同じじゃない」
「同じ、じゃない……?」
強く抱き締めていた腕を解き、その華奢な肩に今一度手を置いて、一歩だけ離れる。
すると、ユミルが涙に濡れた表情で見上げてくる。潤みを帯びた、二つのターコイズグリーン。
そうすることで、俺はまっすぐユミルと向きあう。
「ユミル。……俺の亡くした人は、もう二度と戻ってこないし、犯した罪を無かったことにも出来ない……」
サチ。月夜の黒猫団のみんな。ディアベル。コペル。かつて切り伏せた二人のラフコフのギルド員……
俺さえ関わっていなければ死ぬことは無かったかもしれない、あるいは救おうと思えば救えた筈の、数多くの人達。
それらの罪を、俺は一生背負い続けなければならない。けど……
「けど、お前は違う。お前は…………まだやり直せるんだ」
しっかりとその肩を掴み、言う。
「お前はまだ誰も殺しちゃいない。まだみんな、生きてるんだ。だからお前は、たくさんの人と死別した俺と違って……償える」
「……
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