46:救ってみせろよ
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◆
「だから――――ごめんな」
俺はそう言って、今にも泣き出しそうなユミルの肩を掴み、そっと抱き寄せる。
それにユミルは驚き、もがき暴れようとするが俺は一切の抵抗をしない。もしこの腕から逃れようとするのであれば、すぐに抱擁を解くつもりだった。だが、そういう俺の気配を察したらしいユミルはやがて、意外にも諦めたように抵抗をやめてくれた。
それを見た俺は、今度はその背に腕を回して……もう少しだけ強く、しっかりとこの子供を抱き締める。
そして思う。
……本当に、本当に華奢な体だ。
決して大柄ではない俺の両腕でも、容易く覆い包めてしまえる小さくて柔らかな体。
土埃を被っても艶やかさを失わない金髪から仄かに香る、優しく甘い匂い。
今までの暴走を引き起こしていた張本人とはとても思えないほどに……幼くて温かく、そして儚い存在が、俺の腕の中にあった。
その感触を実感しながら、俺はアスナ達に聞こえない程度に少し抑えたボリュームの声で口を開く。
「本当に、ごめんな……ユミル。俺は、今のお前は救えても……過去のお前まで救ってやることはできない。お前が亡くした大切なものは返してやれないし、お前の罪も消してやることも出来ない」
「…………だったらっ……」
腕の中で、ユミルが小さく震えた。
「ボクはどうすればいいんだよっ!? どうすればいいのっ……!? お願いだからっ……教えてよっ……!」
俺の胸に向かって、ユミルが搾り出す様な声をあげる。
「そうだよな。悲しいよな……お前の気持ち、とてもよく分か――」
「――お前なんかに分かるもんかっ!! あいつらに囲まれて、誰も失わずぬくぬくと生きてきたお前なんかにっ!!」
だむっ、とユミルが俺の胸板を叩く。しかし、力がまるで込められていなかった。
それに俺は首を振る。
「いや……よく分かる。――なぜなら俺も、昔……大切な……本当に大切だった人を、失ったからな……」
――――サチ。
「彼女は……俺の目の前で、俺になにかを言い残そうと口を開いて……そして散っていった。かつては、その言葉を聞く為だけに全てを犠牲にして、狂いながら生きてきた頃が俺にもあった。そして今も……俺はずっと、過去の過ちに苛まれながら生きているんだよ」
「――――ッ!!」
今度こそユミルが大きく震える。
「――なぁ、ユミル……」
……俺は、あのまっすぐに見つめてくる黒い瞳の微笑みを、今でも鮮明に思い出せる。
「目の前で大切な人を、失うってのはっ……すごく、つらいよなっ……」
彼女は、録音クリスタルにあった『ありがとう、さよなら』という言葉を本当に、その身が散る
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