46:救ってみせろよ
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薙ぎ払い』だった。
「あと、不意打ちながらも高確率で発生したはずのクリティカル判定が出ず、ダメージが増えなかったのもラッキーだったな……。ミストユニコーンはステータスを見た限りでは相当に脆いから、俺もあの一撃を見て、てっきりベリーは殺されてしまったと思ってたよ。……ついさっきまでは、な」
「……なんで、ベリーが生きてるって、気付けたの……」
未だに信じられない顔をしながらも、頭を軽く伏せて目を隠しながらユミルは言った。
「簡単だ」
キリトはその頭に乗せていた手を降ろし、言葉を続ける。
「思えば、仮にデイドがユニコーンを倒せていれば……その瞬間にデイドは大量の経験地を得てレベルアップし、ファンファーレが鳴っていただろう。それに……索敵スキルを熟練度九八〇以上鍛えると、壁やオブジェクトの向こうの存在も察知できるからな。あの時は緊迫した状況で気付くのが遅れたが、お前がさっき突っ込んで来るのを迎えていた時、視界の端で、草むらの奥からベリーの生体反応が視えた。だから俺は、お前を一言で救えると言ったんだ。それだけのことだよ。……お前、村の川で俺と話したときの事、覚えてるか?」
「え……?」
それからキリトはなにを思ったか……
「な、索敵スキルも上げておくもんだろ?」
と、今までと打って変わってニッと不敵に微笑んだ。
「……………」
「……………」
やや長い静寂。
わたしには今の二人のやり取りの内情が分からないけど……ひとまずキリトが気まずそうに微笑みを崩し始めたのは分かった。
しかし、
「は……」
先に口を開いたのはユミルだった。
「なんだよ、それぇっ……」
もう、それは憎しみだけではなくなった、様々な感情がぐちゃぐちゃに織り交ざった涙交じりの声。
「馬鹿じゃないのっ……? ベリーは助かっても、ボクは……ちっとも救われてなんかいちゃいないよっ……! ルビーは帰ってこないし、ボクがっ……マーブル達を傷つけた過去は、変わらないんだからっ……!!」
ユミルはそれだけ言って……ベリーが助かって安堵しているのか、それとも未だ有り余る憎しみを必死に抑えているのかは分からないが……肩を小刻みに震わせ、伏せたままの今にも再び泣き出しそうな顔を隠し貫いていた。
それを見下ろしているキリトの顔が、再び真摯なものに戻る。
「……ああ、その通りだ」
キリトは……ユミルの言葉を肯定していた。
「だから、俺は言ったんだ。『今のお前なら救ってやれる』……ってな。だから――」
そう言って……
「――――ごめんな」
キリトは、目の前に佇むユミルを……抱き締めていた。
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