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ラインの黄金
第二幕その十六
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たのか」
「何故私達の手から離れたのか」
 嘆く声が響く。
「あの黄金が再び」
「私達の手に返るように」
(そうあるべきだ)
 実はローゲもそう考えてはいるのだった。
(この者達にこそ。あの黄金は)
「あの娘達か」
 ヴォータンはそれを聞いて眉を顰めさせた。
「指輪を返せというのか」
(貴方が本来はそうあるべきと思っていること)
 ローゲはまた心の中で呟いた。
(それがな)
「嘆いてもどうにもならない」
 だがそれでもヴォータンはこう言うのだった。
「最早。それはな」
「その通りです」
 ローゲもまた本心を隠していた。
「娘達よ。嘆いても仕方がないことだ」
「ローゲ、何故そんなことを?」
「私達に言うの?」
 乙女達は揃って彼に嘆きの言葉をかけた。
「全てを知っている貴方がどうして」
「そのようなことを」
「ヴォータンの言葉を聞くのだ」
 しかし彼はあくまでこう言うだけだった。
「御前達のあの黄金はもうその手から離れた」
「そんな、それでは」
「私達は」
「神々の新しい光の下に楽しく暮らすのだ」
「その通りだ」
 ヴォータンもやはり心を隠して話す。
「では神々よ」
「はい」
 ローゲが代表して応える形となった。
「参りましょう、ヴァルハラへ」
「うむ、それではな」
 ヴォータンもそれに頷く。
「行こう、神々の座へ」
「あの橋を渡り」
 神々はその橋を渡っていく。しかし乙女達の嘆きは続いていく。
「あの黄金を再び私達の手に」
「親しみと誠はただ深みにだけあり」
 こう嘆きの言葉を出していく。
「上の世界で楽しむことは虚偽と卑怯ばかり」
「その通りだが。さて」
 神々は橋を渡り終えてヴァルハラに入った。最後に渡り終えたローゲは橋に火をやった。
 虹の橋はこれにより燃え落ちてしまった。ローゲはそれを暫く見ていたが完全に焼け落ちたのを見て今はヴァルハラに入った。その考えを隠したまま。


ラインの黄金   完


                2009・6・20

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