第二幕その十五
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第二幕その十五
「そんなものはな。それよりも指輪だ」
「まだ言うのか。指輪はわしのものだ」
「わしのものだ!」
「何を!」
二人は早速争いに入った。共に地を割らんばかりに暴れるがファゾルトがバランスを崩したその時だった。黄金の束の一つを掴んだ弟が兄の頭を打った。
「うぐっ・・・・・・」
「銀もくれてやる!」
今度は銀を掴んでそれで殴った。しかも何度もだ。これでファゾルトは倒れ目の光を消してしまった。ファフナーはその兄が死んだのを見ると忌々しげにこう言い捨てた。
「さっさと納得していればそんなことにはならなかったんだ」
そして袋に宝を全て入れてそのうえで立ち去るのだった。ローゲはその彼の後姿を見てそのうえでヴォータンに対して言うのだった。
「あいつもです」
「滅びるというのだな」
「兄と同じ末路を迎えます」
冷たい声でヴォータンに告げていた。
「やがては」
「それが指輪の呪いなのだな」
「そうです。それよりもヴォータン」
ここであらためて彼に述べてみせた。
「貴方の幸福はそれよりも大きいものです」
「大きいとは?」
「指輪を手に入れることにより多くの利益を得て」
まずはその権勢のことを話すのだった。
「指輪を取られてはまたそれ以上の得をする」
「取られてなのか」
「そうです。貴方の敵達は」
その横たわるファゾルトの亡骸を指差す。彼は仰向けに倒れ死者の顔を見せているだけだ。
「あのようにして滅んでいくのです」
「あのようにか」
「はい」
ここでローゲが右手の人差し指と親指を打ち合わせる。するとそれにより炎が起こり巨人の亡骸を包み込む。そうして彼を葬るのであった。
「一人でに」
「しかしだ」
だがヴォータンの顔は晴れやかではなかった。
「不安に苛まれている」
「不安に?」
「憂慮と懸念が心を捉える。それをどうするべきか」
「ふむ。それならです」
ローゲはここでまた彼に助言をするのだった。
「先程の女神ですが」
「エルダか」
「彼女に会われるといいでしょう」
このことを勧めるのであった。
「そうすればどうするべきか教えてくれるでしょう」
「そうか。それではな」
「ではヴォータンよ」
ローゲはこのことを進めてからまた彼に声をかけた。
「あとは城に入りましょう」
「あの城にか」
「そうです、主を暖かく迎えようとしているあの城に」
天に浮かぶその城を指差しての言葉であった。
「あの城に入りましょう」
「うむ」
ヴォータンもここでは彼の言葉に頷くのだった。
「不吉な、そして多くのものを支払ったがな」
「どうも空気が悪い」
ドンナーがここで出て来て述べた。
「うっとうしいもやが辺りを生めて憂鬱な感じがする」
「確かに」
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