暁 〜小説投稿サイト〜
なりたくないけどチートな勇者
3*パジャマの不審者
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薄い黒地の服にズボン、それだけ。

彼の来た方向からなら大陸有数の砂漠を越えなければここにはこれない。
それを靴すら履かず、この恰好でわたるのは不可能だ。
そのうえ荷物すらない。

さらに砂漠にはカームル並の魔物がうじゃうじゃいる。
なのに服には草が多少ついてる程度で破れていたり、穴が開いてすらいない。


そんな珍妙な者だからこそ、彼は警戒した。

何者かと聞いたら、名前は教えられたが、何が知りたいか解らないといわれ、槍と剣を下げるよう要求してきた。
少し考えたが、問題ないと判断し、要求通りにするよう兵士たちに合図を送った。

そして、1番知りたかった事を質問した。

「単刀直入に聞く。
カームルを倒したのは貴様か?」

すると、彼の予想を超えた返答が返ってきた。

「あの?、カームルってなんですか?」

これには驚いた。
カームルを知らない者がいるという事に、彼は愕然とした。

「…カームルを知らない、のか?」

「はい。」

即答。

普通カームルくらいの高レベルな魔物は一般の市民でも知っている。
それをしらないとは、何処の田舎から来たのだろうか。

とりあえず、奴に丁寧にカームルの特徴を教えてやると、予想通りの返答がきた。

「あぁ、それなら一回倒しました。あっちの方に残骸があるはずです。」

それからの兵士たちの動きは称賛に値するものだった。
一瞬で槍を構え、奴の行動範囲を狭め、威嚇した。

これをうけ、奴もかなり動揺してるようだ。

そこで、奴の言っていた方向へ偵察に言っていた副隊長のノアが報告に戻ってきた。

「隊長、確かに今確認したところ、ここから約6キノ程のところにカームルの死骸が発見されました。」

やはりカームルを倒したのは奴だっと確信し、彼はさらに警戒を強めた。

「…どのような状態だった。」

カームル程の魔物がやられたなら、その方法によって死体の状態も変わってくる。
それにより、奴の手口が解るかもしれない。

しかし

「それが…。」

ノアが困惑した声で放った次の言葉でその期待は脆くも散った。

「黒コゲで、バラバラでした、これがその一部です。
さらに直線距離60メノ程、幅は3メノ程がえぐれていて、そこを中心にカームルのかけらが飛び散っていました。」

渡された黒い塊からは確かにカームルの魔力が感じられた。
しかも、ほぼ完璧な状態で。

普通、魔物の魔力は魔物自身が疲れたり、傷ついたりすると弱っていく。
しかしこの塊は、そんな様子は全く無い。
つまり、一撃でこの状態にされ、葬り去られたことを意味する。

彼はこの者が予想より、遥かに危険であると判断した。

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