英雄去りて祭りが始まる
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迎するわ。
それと生還おめでとう」
まだ新婚気分が抜け切れないキャゼルヌ婦人の挨拶を受けたヤンは、ちらりと先輩であるアレックス・キャゼルヌ中佐の手を握っている礼服姿のお姉さまに視線を向けて苦笑する。
ヤンが月給がぶっ飛ぶ最高級ケーキの話をキャゼルヌ中佐にした結果、「俺のところで食わせてやる」とキャゼルヌ婦人の手料理を餌に家に誘った次第。
キャゼルヌからすれば、半分は後輩へのからかいでもう半分は噂の少将閣下の顔を見てやろうという所。
その後、キャゼルヌ婦人の手料理に満足した三人は書斎に移り、コーヒーや紅茶を片手にやばい話を始める事になる。
「一年ほど前だったか、お前哨戒中の偶発戦闘でフェザーンのワレンコフ代将相当官を助けた事があったろ。
あれの裏話が聞けた」
キャゼルヌ中佐が口火を切るが、その裏話を彼女が作っていたのをヤンは知っていた。
これは、キャゼルヌ中佐と彼女のゲームなのだと理解しヤンは極力置物に徹する事に決めた。
「あの時、何でワレンコフ代将相当官が居たかというと、帝国本土から逃げて来た海賊を叩こうとしていたらしい。
その海賊ってのが、帝国領内で働いていたフェザーン船団に大損害を与えた船らしくてな。
撃破する事で功績をあげようとしていたそうな」
物流を支配するためには否応なく情報も支配しないといけない。
同盟近年最高級の後方作業のエキスパートである彼は、中佐の階級で知りうる事というオブラートを包みながら、彼女を攻撃する。
少将でかつこの裏話を積極的に仕掛けた彼女はそのオブラートをはがしながら、やばい話を適当に包み込んでキャゼルヌに投げ返す。
「フェザーンなんだけど、かなり楽しい事になってるわ。
政府関係者の人事異動が激しすぎて、帝国同盟とも商業活動に支障が出かねないと同盟高等弁務官事務所が頭を抱えているそうよ。
最近は政府要人の葬儀も多くて花代も馬鹿にならないとぼやいているとか」
噂話風に呟いた彼女によってばらされるフェザーン内部の権力闘争の存在。
その権力闘争はどうやら、ワレンコフ現自治領主の敗北という形で終わりそうだった。
という事は、ワレンコフ自治領主の元で行われていた傭兵派遣業務は見直される可能性が高いのだがそうは問屋がおろさない。
「傭兵の存在に帝国貴族はかなり依存しているからな。
下手したら更にフェザーンへの感情が悪化しかねんぞ」
帝国領内では財政不足による重税とそれにともなう辺境部の反乱が頻発しており、その鎮圧に傭兵を使う事で更なる反感を招いていたのである。
反乱にかこつけての略奪や海賊行為も日常茶飯事で、その背後に有力貴族がついた事でどうにもならない状況に陥りつつあったのだ。
こんな背景があった為に帝国領内
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