留まる美しさ
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武蔵は戦闘による補修を朝から晩まで行い、補修の音が止むことはほぼ無かった。
止むことは無かったが、作業の間にふと、違う場所を見る者が、必ず、どこかにいる。誰も、それについては何も言わない。
見るだけ見せて、そしておい、と声をかけて再び作業を始めさせることの繰り返し。
誰もが見る方向が同じで、何を見ているのかを理解しているからである。
視線の先に映るのは英国───ではなく輸送艦。この間の戦闘によって、武蔵から切り離された輸送艦の一隻。
連絡すら取りあえないが、とりあえず、無事であるということは情報と知っているが、やはり、思いを停止させるのは不可能に近いだろう。
情報を聞くことと、無事であるという本人からの報告を聞くのでは効果が倍近く違う。
あそこにいるのは、自分達の子供達であり、友であり、仲間であり、知り合いであるのだ。心配の二文字はそう簡単に取り外せない。
誰だってそうだ。
故に
「……浅間。視線」
「……え?」
突然言われた言葉に浅間は、眠りから覚めたというような感覚を得て声をかけた喜美の方に反射で振り返る。
そこには呆れた様な苦笑を浮かべている喜美。
というか、周りにいるメンバーも全員苦笑やら何やらをこちらに向けてきている。一人、全裸の格好をこっちにアピールしている馬鹿がいたが、ウルキアガ君が黙って蹴り転がしてうひゃーって叫んでいるから問題無しと判断する。
「えーーと……」
自分は確か、今までの情勢、つまり、武蔵の補修やら不安に思っている武蔵の人達や輸送艦にいるメンバーの帰還とかについて話し合っていてという思い出さなければいけない思考に気付き、自分が今までどこに視線を向けていたかに気付く。
「す、すいません。ぼーっとしちゃって……」
「ボーーン! と!? ボーーンね!? いいわ浅間! 自分のナイス乳を見せつける事を態度だけじゃなくて、言葉でもするのね!? 正しく、言葉攻め! ドSのような単語をまさか、自分の乳を見せつける単語に改造するなんていやらしいわね!」
「姉ちゃん姉ちゃん! 流石の俺もそこからそんな思考に至る経路が理解できねえぜ!? 姉ちゃん相手だから優しく言うけど脳味噌どうなってるんだよ!?」
「フフフ、だから、あんたは愚弟なのよ……いい? 賢姉の脳味噌がどうなっているかですって? 馬鹿ね。見たことないから知らないに決まってるじゃない! ただ、知っているのは賢姉の脳味噌に詰まっているのはエロと賢さよ! 後は知らない」
「賢さがあるなら、そんな馬鹿な答えを言うな!」
全員で声を合わせて叫ぶが、喜美は耳を塞いで無視するだけ。
全員でこの野郎という意思が生まれたことを悟るが、無駄になる未来は見えているので、拳の力を霧散させる。
この兄妹は、本当に
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