第一話 〜門出〜
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『遼ちゃん!!』
子供の後ろ、僕から見て正面から声がかかる。
『最後だよ!!』
『頑張って!!』
昼に会ったあの子達だった。
必死に目の前の少年を励ます。
『…その』
ついに言葉がで始める。
『わ、悪かったよ』
その一言で周りが湧き立った。
『や、やったー!!』
『遼ちゃんやればできるじゃん!!』
『う、うっせーよ!!阿呆!!』
そんな子供達のやり取りを周りの村人達は微笑ましく見ている。
『べ、別にまた遊んでやってもいいんだからな!?またいつでも来たかったら…』
『遼、ありがとうね』
『っ…!!』
『お、おい!!』
急に抱きつかれ、慌ててしまったが、涙を啜る音が聞こえて平静さを取り戻す。
『…また来るからな』
『ぜっだいっ…ぜっだいだがんなぁ…っ!!』
頭を撫でてやると堰が来れたように泣き始めた。
それをただひたすら満足するまで泣かせてあげた。
そして夕焼けが本格的に暗くなりはじめた時、ようやく泣き止んだ。
『…それじゃあな』
そう言うと顔を上げ満面の笑みで。
『おうっ またな!!』
と、答えてくれた。
その目は真っ赤に腫れ上がっていて思わず笑ってしまった。
『ぷっ、お前目が真っ赤じゃないか!!ははは!!』
『なっ!!』
少年はすごく恥ずかしそうに目を擦った。
『じゃあな!!ははは!!』
ちょっとした優越感に浸りながら馬を連れて先で待っていた凱雲の元へ向かう。
『やい豪帯!!馬には乗らないのか!!』
最後の最後で悲劇が待っていた。
一瞬で血の気が引いた。
周りはこの少年の意外な発言に眉をしかめていた。
が、確かにもっともである。
みんなの視線が自分に集まる。
『…』
そっと振り返ると、少年の勝ち誇った顔が目に入った。
そう、あの時見られていたのだった。
隣まで来た凱雲が横で囁く。
『あの少年に一本取られましたな』
僕は絶望に打ちひしがれた。
『…豪帯様』
『…うん』
それからは大勢の笑い声に見送られたのは言うまでもなかった 。
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