第一話 〜門出〜
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祭りの時の話などの昔話に花を咲かせた後、別れを告げて部屋を後にした。
『お父さんの所でも元気でな』
そう言ってもらえて嬉しかった。
県庁を出ると既に空が少し赤みがかっていた。
どうやら大分時間を潰してしまったようだ。
『大分時間かけちゃってごめんね』
『いえ、最後…ではございませんが、こんな時くらいは別れを噛み締めてもよろしいかと』
『ありがとう』
『はい』
本当なら危険な夜を避け、朝を待ってから村を出るのだが、僕らの村から関までは遠く、馬を走らせない事には一日で着ける位置には無い。
ようはどっちにしろ野宿はするので僕らは村の出口を目指した。
村の出口に着くと驚く事に人集りができていた。
『おぉ、みんな!!豪帯ちゃんが来たぞ!!』
その村人の一声で一斉に声があがる。
『豪帯ちゃん!!』
『待ってたぞ!!』
『早くこいよ!!』
『待ちくたびれたぞ!!』
僕は目頭がまた熱くなるのを感じた。
『豪帯様』
『うん…わかってる。おーい!!』
そう言って馬を走らせた。
『まったく何やってたんだよ』
『ごめんなさい。みんないつから?』
『お昼からよ。みんな豪帯ちゃんのお別れしないとねって事で仕事朝の内に終わらせてきてくれたのよ』
『みんな…』
思わず涙が出てしまった。
みんな父さんが県長の時から父さんを慕ってくれていて、その子供である僕の事も自分の子供のように接してくれていた。
父さんが関に移った後もそれは変わらず、叔父さんと一緒に大切にしてもらった。
言うなれば全員僕の家族みたいな人達だった。
『何泣いてんだよ!!男なら堂々としろよ!!』
『お父さんと会うんでしょ?』
『わかってる…わかってるよ。けど…』
涙が後から後から湧き上がってくる。
ひとしきり泣いた後、馬を降りてみんな一人一人に挨拶を済ませる。
ある人なんかはお土産なんかもくれた。
本当に大切に思われているのだと感じた。
『それじゃあ行ってくるよ』
『あっちでも元気でね』
『たまには顔出せよ 』
『うん 』
そう言うと隣でずっと待っててくれていた凱雲に目をやる。
それを察して凱雲が先に歩き始める。
気を効かせてくれて既に僕が馬から降りた辺りから馬を降りてくれていたようだ。
『それじゃ』
凱雲に続いて自分も馬を連れて歩き始める。
『豪帯!!』
別れの空気の中、突然後ろから聞き慣れた子供の声で名前を呼ばれて振り返る。
『お前…』
そこにいたのは昼に喧嘩別れしてしまったあの子がいた。
『…』
『…』
お互い言葉が出ない。
別れ際とはいえ、喧嘩してまだ一日も経っていない。
どちらも気まずい感じである
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