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久遠の神話
第三十九話 君子の絆その九
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「小人は同じて和せずです」
「同じるとは」
「つまりただ利益によって悪い言葉ではつるんでいるとなります」
 大石はこうした言葉で小人の絆を表現した。
「馴れ合いとも言うでしょうか」
「馴れ合いは僕もわかります」
「あまりいいお付き合いではないですね」
「友達でもないですよね」
「友達というよりは」
 何かともだ。大石は話していく。
「ごっこですね」
「ごっこですか」
「はい、友達ごっこに過ぎません」
 大石は淡々と述べていく。ここではだ。
「そうしたものに過ぎないのです」
「何かそういうのは」
「よくないですね」
「はい、やっぱり人と人の付き合いは」
 まさにだ。それはどういうものであるべきかというのだ。上城もその生真面目な性格から大石に応えるのだった。
「もっと正面と正面からですね」
「ぶつかるものだというのですね」
「はい、そんな馴れ合いとかごっこは」
「そうしたものよりも」
「はい、もっと正面からです」
 極めて真面目にだ。上城は言うのである。
「向かい合うべきです」
「そういう絆はです」
「本物ですよね」
「君子ですね」
 それになるというのだ。
「君子は和して同ぜずです」
「和してですか」
「はい、そして同じにはならないのです」
「つまり馴れ合わないんですね」
「真剣に向かい合い。そして」
 それと共にだというのだ。
「己を捨てない関係です」
「己をですか」
「小人は信念や誇りを簡単に捨てます」
 だからだ。小人だというのだ。
「しかし君子はです」
「信念や誇りをですか」
「そうです、捨てません」
 そうするというのだ。
「決してです。それはありません」
「じゃあ僕は」
「君子。それにはまだ及ばなくとも」
 それでもだというのだ。
「それに近付こうとしていますね」
「そうですか。近付こうとですか」
「そうなっています。ですから」
「このままいけばですね」
「立派な方になられるでしょう」
 大石は微笑んで上城を見てだ。彼自身に述べた。
「頑張って下さいね」
「人間としてもですか」
「剣士は何でしょうか」
 大石は上城に問うた。ここで。
「それは何でしょうか」
「剣士はですか」
「はい、何だと思われますか」
「ええと。それは」
 上城は大石のこの問いにはだ。まずは首を傾げさせた。そうしてそのうえで腕を組んで難しい顔にもなって言うのだった。
「何といいますか」
「何だと思われますか」
「そうですね。多分ですけれど」
 熟考しながらだ。彼は答えた。
「人間でしょうか」
「剣士はですね」
「はい、人間でしょうか」
「そうです、私もそう思います」
「剣士は人間ですね」
「それでは。人間はです」 
 どうかというのだ。
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