第二十一話 夏休みのはじまりその四
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「打たれまくって負けた記憶は本当に少ないから」
「ここぞって時に打たれね」
「三対二とか二対一で負けるのよね」
「一点差負け凄い多いのよね」
「毎度毎度ね」
「頭にくる位ね」
そんな負けばかりなのが阪神だ。
「そうなのよね」
「そうそう、阪神は」
「ううん、阪神はねえ」
「どうしてもね」
琴乃達だけでなく周りも腕を組み難しい顔になっていた。皆阪神のことが好きで心配で仕方がないのだ。
「阪神はどうしても」
「甲子園の魔物って阪神にかかるの?」
「そっちに仕掛けてくるの?」
「巨人につけばいいのにね」
「それも一兆年位」
実に良識ある意見ばかりだ、巨人は無様に敗れなくてはならない。
「甲子園の魔物って阪神にばかり嫌がらせして」
「ロッテ相手の日本シリーズとかね」
「ホークス相手でも甲子園だったじゃない」
どちらも甲子園で日本一を決められている。
「全く、あの魔物だけは碌なものじゃないわね」
「巨人につけっての」
「ついでに打てる助っ人ね」
「それ来てくれないとね」
「阪神優勝してくれないから」
「全くよ」
皆でこんな話をした、そしてだった。
琴乃は意を決した顔になって真剣な顔で周囲に断言した。
「私広島に行っても絶対にマツダスタジアムには行かないから」
「阪神の試合でもなの」
「観ないのね」
「一塁側からはね」
それは絶対にだというのだ。
「三塁側から観るから」
「そこ、絶対に守ってね」
「合宿中広島市内に行くことがあってもね」
「やっていいことと悪いことがあるから」
「折角今のところ好調でクライマックスシリーズにも出られそうだし」
「やっていいことと悪いことがあるから」
「三塁はね」
それは駄目だと話してだった、そして。
琴乃は今度は部活でその合宿と阪神のことを話した、五人でストレッチをしながらそのうえで話をするのだった。
五人共手元には五〇〇ミリリットルのペットボトルがありそこにお茶やお水がある、それ以外にも部室の中には冷やした麦茶が入った大きなヤカンもある。
その中で水を飲みつつストレッチをしつつ言う琴乃だった。
「で、江田島だけれど」
「言うまでもないけれどな」
「赤ヘルの領内よね」
「広島だからな」
美優はこのことを当然だと琴乃に返す。
「言うまでもなくな」
「広島なのね」
「ああ、そこ以外ないからな」
「それじゃあやっぱり」
「阪神は嫌われてないけれどな」
赤い県の中においてもだ。
「けれど殆どの人がファンじゃないからな」
「いつもみたいな応援はできないのね」
「三塁側でさ」
応援する場所はやはりそこだった。
「お客さんとしてな」
「応援ね」
「ああ、そうなるよ」
美優は真面目に話す。
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