第七話 赤い洗礼
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「――ったく、にしてもだらしねぇの」
各所で怒声、悲鳴が響く戦線を見渡して、ため息をつく。
初め、死者が出たのは討伐隊のほうだったが、狂乱した攻略組プレイヤーの反撃によって被害はちょうど五分五分といったところだった。
ならば、その戦況を一気に傾ける。
俺はラフコフメンバーの中に躍り出ると、ソードスキルを発動させた。
重範囲攻撃技『旋車』。
血のように赤いライトエフェクトが迸り、周囲の三人の首を斬り飛ばし、さらに二人を吹き飛ばした。
立て続けに三回、ポリゴンが弾ける。突然の大被害に、ラフコフメンバーの視線がこちらに集まった。その中には俺のことを知っている者もいたようで、口々にあの二つ名を叫んでいた。
「やれやれ、有名人は辛いわー」
呟きつつ、単発重刺突技『平貫』で二人をまとめて串刺しにする。当然、刺したのはウィークポイントである心臓部だ。
返り血の代わりに破砕するポリゴンを浴びながら、俺はカタナを振り払って顔を上げた。
かつて、アインクラッド中層に短期間だけ現れたオレンジキラーがいた。赤い衣を纏い、死の洗礼を与える死神。その実力は凄まじく、1日で十人を超えるオレンジプレイヤーが殺された。当然、その存在は危険視され、SAOでの治安維持を行っている集団――『軍』にも話が伝わり、近いうちに対策部隊が派遣されるはずだった。
しかし出現からわずか三日後、そのプレイヤーは忽然と姿を消し、一度も現れることはなかった。
雄叫びを上げ、緑色のライトエフェクトを纏った両手槍をこちらに向けてくる男の姿が見えた。
俺はカタナから左手を離し、左の腰だめに引き付ける。
居合い切りの要領で放たれたソードスキルが、槍と激突した。カタナは槍を体の外側に逸らしながら、槍に沿うように相手の腹へ吸い込まれていく。
俺がもっとも得意とする対人戦用システム外スキル『打ち落とし』である。相手の攻撃を弾きながら、その懐に滑り込むというもので、特に槍を使う相手に効果的だ。
わずかに残ったHPを通常攻撃できっちり削り切って、俺は次の獲物へと標的を移した。
「さて、どんどん行こうか」
死の洗礼を与える赤い死神――今やボリュームゾーンでは伝説と化しているその名は……『赤い洗礼』といった。
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