第二幕その一
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れではだ」
「なっ、消えた!?」
アルベリッヒが帽子を被った。するとその姿が見る見るうちに消えてしまった。ミーメは消えてしまった兄の姿を見回すが何処にもなかった。
「何処だ!?何処にいるんだ?」
「わしはここだ」
「うわっ!」
ここでミーメは吹き飛ばされた。それと共に酷く焼けるような痛みと衝撃が彼を襲う。明らかに鞭によるものだった。アルベリッヒの鞭である。
「ニーベルングの者共よ!」
姿を消したアルベリッヒが叫ぶ。
「わしは御前達を何処からでも見ているのだ」
そしてこう言うのだった。
「わしの姿が見えなくともわしはいる。わしの目は誤魔化せぬぞ」
「そんな、それではわし等は」
「そうだ、わしには逆らえぬ」
ミーメの嘆きに応えた言葉だった。
「決してな。わしは常に貴様等を見張っているのだ!」
「ああ、何ということだ」
ミーメはへたれ込み嘆き悲しむしかなかった。
「これではわし等はもう終わりだ」
「ここです」
彼が嘆いているとそこに。二人の異邦人が来た。黒い肌の男が隻眼の男に告げていた。
「ここがニーベルハイムです」
「ここがか」
「はじめて来られたようですね」
「そうだな」
ヴォータンはこうローゲに答えた。
「ここに来たのははじめてだ」
「そうですか。しかし」
「しかし?」
「今日は随分と騒がしいですね」
ニーベルハイムから聞こえてくる音を聞いての言葉だ。松明の赤と苔の白に浮かび上がっている洞窟の世界は嘆きと何かを打つ音で満ちていた。
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