A's編
第三十一話 後
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うか。
僕にはそんな戦況をフェンスにしがみついたまま見ることしかできない。
応援してくれ、と言ってくれたなのはちゃんだが、見送る時の応援がせいぜいだ。聞こえないのであれば、あとは心の中で祈るしかない。もっとも、その祈りさえも届くかどうかはわからないが。
戦況も僕が見ている限りでは一進一退というところだろうか。ここからどうやって戦況が動くのか僕には全く分からない。大きな動きでもなければ、体力の続く限り戦うのではないだろうか、と疑念を抱き始めたときだった。
「……うそ……だろう」
僕は呆然とつぶやいてしまった。
なぜなら、僕が見詰めていたその視界の先に見えたのは、まるでカラスのように黒い影。しかし、カラスというにはあまりに大きすぎる。しかも、目を凝らしてみてみれば、その姿が次第に見えてくる。
その姿は、地球にはありえないもので。想像と物語の中にしか存在しないはずの存在。大きすぎる翼をもち、何物も貫けない鱗を持ち、口から生える牙はすべてを砕きそうな硬さを誇り、その真紅の粗暴は鋭く空の王者としての風格を兼ね備えた存在。
僕の想像が間違っていなければ、その存在は―――竜だった。
しかも、一匹ではない。空を埋め尽くすほど無数の竜。それが海鳴市の空を支配していた。
どうしてそんなことができるのか、僕にはわからない。ただ、目の前の現象を端的にあらわすならば、本当に竜が現れた、としか言いようがないのだ。
さすがにこれはまずいだろう、と思って、僕はなのはちゃんに念話を送って逃げるように言おうと思ったが、直前で切り上げた。なぜなら、念話をしながら戦闘することが危険だと思ったからだ。魔法を使えている時点で並列思考ができることはわかっているが、それでも魔法のために労力をさいたほうが戦いやすいはずだ。
もしも、僕のせいでそれが隙になって大怪我でもしようものなら目も当てられない。
しかし、そうだとすると、僕はどうするべきだろうか。あの巨体に立ち向かえるとは到底思えない。先ほどの段階でも出て行っても無力だと思い知らされたのだ。ならば、僕は僕のできることをやるべきだ。
たとえば、時空管理局に頼る、とか。
いや、それもどうだろうか。僕が倒れる直前まで話していたのはクロノさんであり、僕を攻撃したのもクロノさんである。いや、よくよく考えれば言動がやや怪しかったことを考えると、本当にクロノさんだったのか、という疑念は残るものの、闇の書を持っていた以上、彼が時空管理局の一員であることは間違いないだろう。
ならば、ここで頼ってもいいものだろうか。なにより、この大事になっているのに時空管理局の人が見当たらないのもおかしい。そのことがさらに疑念を強くさせる。いったいどうなっているのだ
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