亡国(やみ)の欠片
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「ちぃ、腐れ政治家が……もしそれがばれた時の方が問題になるって分かっていないの!?」
EUの中でもイグニッションプラン筆頭と言われているイギリスだが、その内部は他の国同様ひとつではない。様々な派閥が存在する。
そして彼らの誰もが恐れているのが自分達の権威の失墜。秘密裏に開発していたISを強奪された上にそれが他国の手によって捕縛なんてことになれば、最悪英国でのIS開発が中止に追い込まれる。
ISの開発が出来なくなると言うのは今の世界の中では発言権を失うに等しい。それは何としても避けたい。ではどうするかといえば事件の隠蔽。強奪事件そのものが外部にばれなければそのことは決して公にはならない。
ただしそれは現状維持でしかなく自分達の保身のためでしかない。もし将来強奪ISが捕縛、もしくは公表されるようなことがあればどの道同じなのだ。それが早いか遅いか。それを防ぐためには身内(国内)で片をつけるしかないが、それを政治家達は尻込みしている。それを理解していない政治家たちにヴィクトリアは我慢がならないのだ。
「恐らく奴らは陸路で東へ向かったものと思われます」
「そう、とすれば東南アジア……か」
「はい」
「はあ、こうなると便利な世の中が恨めしいわ。半日あれば世界の裏側まで行けるんだから。一日経った今ではもう追跡は無理でしょうね」
地図を見ながらヴィクトリアは苦笑いをして再び深く椅子に体重を預ける。東南アジアと一言で言っても広い。特に一部は無数の島々が存在し、今でも各国が軍や警備を配備して領有権を争っている。そんなところに逃げられればEU代表の一角を担うイギリスと言えども他勢力の国。強制介入や軍の派遣などは出来ない。
「申し訳ありません」
「さっきも言ったわ。これは私の見通しの甘さが起こしたことだってね」
「いえ、MI6の方でも掴みきれていませんでした。謝っても謝りきれません」
深々と頭を下げるジェーンを見ながらヴィクトリアは報告書を物凄いスピードで捲りながら自分の頭の中で情報を纏めていく。5分程度で全ての報告書に目を通したヴィクトリアは呟くように声を出す。
「そう……ならジェーン、貴方に頼みがあるわ」
「はい。なんなりと」
即答するジェーンに対してヴィクトリアもまた素早く言葉を紡いでいく。
「まだ艦船はソロモン諸島沖に残っているわね?」
「はい。2隻だけですが」
それを聞いたヴィクトリアは椅子から立ち上がるとジェーンに対して厳しい口調で言った。
「向こうの時間で8月30日までなら事後処理と経過収集で待機させられるわ。戻ってきたばかりで悪いけど今すぐあっちに飛んで可能な限り情報の収集を。東南アジアに抜けているのなら何か痕跡が残っているはずだから」
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