暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
SAO編
episode7 スランプと限界点
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 「……」

 確かに、そうと言えばそうだろう。
 だが、ヤバいがまあいけるだろう、と思ったのも確かだ。

 とりあえず言えるのは、二年に渡るSAO歴で研ぎ澄ましていた俺のクエスト難易度に対する勘が、鈍っているということだろう。エギルの言う通り、俺は自分の最大の長所を殺しているのかもしれない。

 その理由に関して、エギルは何も聞かない。俺も言わない。
 二人とも、言うまでも無く知っているからだ。

 この世界で、俺の最も大切な人だった、ソラの死。

 その出来事が、もともと薄かった俺の死に対する恐怖感をますます、そして決定的に狂わせてしまったのだろう。俺も、自分が死にたがっているとこそ思っていないものの、本当に追い詰められた場面での集中力が、以前より乱れているのを自覚している。

 だが、それでも俺はクエストを受け続けていた。理由は俺にも判然としないが、おそらく習慣ってやつだろう。昔から続けているせいで、それをしない生活が暇すぎて考えられなかったという感じなのかもしれない。或いは逆に、何も考えなかったらこうしてクエストを受け続けているのかもしれない。

 結果、こんな状況なのだが。

 (……それとも、あのせいかね…)

 そしてもうひとつ、俺のスランプの理由。
 こちらは誰にも…勿論エギルにも言っていないが、精神論では無い厳然たる数値的問題。
 それも、俺の成長を妨げている。

 「……まあいい。で、代金は、」
 「いつも通りでいい」
 「……そうか」

 それだけ言って、エギルがトレードウインドウを操作する。
 表示される金額は、俺の一日の生活費。

 これは以前…といってもギルドホームを出て完全なソロに戻ってからだから三か月程度だが…「どうせあっても使わないから金は適当でいい」と言った際に「…思い遣って恵んでやると思うな」とだけ言って、本当に一日の生活費分しか出さなかったのだ。まさか本気でぎりぎりまで削りやがるとは思わなかった。

 だが、この店主もただの悪徳故買屋ではない。

 「……ああ、コレ。頼まれてたモンだ」
 「……適当に処分してくれ、って言ったんだがな」
 「こんなもん、お前の他に使う奴がいるか」

 実体化したオブジェクト、《フレアガントレット》。耐久度がかなり減っていたため、先日売り払うつもりで渡していたものだ。完全に治っているということは、またリズベットに無理を言って注文したのだろう。受け取ってからまだ一日、リズベットもよく修繕してくれたもんだ。

 まあこんな超特殊な防具、使い道が無いというのも、嘘では無かろうが。

 「あと、コイツだ。奢ってやるから使っとけ」

 手渡される、回復結晶。確かにHPレッドゾーンで転移門にとんでそのままだ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ