SAO編
episode6 ケジメ2
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戦を続けてきた、俺を上回るものではな
い。乱戦状態に入ってから、俺の拳と手刀がエストックを砕いていくペースが上がっている。
そして。
何本目だったか、記憶が曖昧になる頃。
俺のHPが赤の危険域に落ちるかというところで、赤黒く輝く地金を持つエストックを砕く。その瞬間、俺は見た。素早くストレージを見た奴の真っ赤に染まった双眸に、僅かな、ほんの僅かな、動揺が走ったのを。
そして取りだされるのは、エストックでは無かった。
見間違えようも無い。見間違えるはずもない。
赤く燃えるような薄い光を放つ、細身の細剣。
その柄には、虹に音符を模った、『冒険合奏団』のエンブレム。
それは俺の、ソラの、思い出が言い表せないほど詰まった宝物。
《フラッシュフレア》。
その美しき紅き刃が俺の頬を霞めるように突きだされ、俺のHPゲージがついに赤く染まる。
だがもう、そんなことは、何の意味も無かった。
追い続けたその剣を前に、俺はその体を踊らせ、真正面からザザへと突進する。
俺の、もう限界だと思っていた脳が更に加速する。対してザザは焦りが隠せない。その動きの正確さには、さっきまでのキレが無い。繰り出される剣戟は、俺の加速した体には届かない。引き寄せられる剣の腹を、右手で打つごとに、激しい光が…火焔のように赤い火花が散り、その耐久度が目に見えて削られていく。
「……クッ、クソッ…!」
ザザの顔が、苦々しく歪む。
焦りはこの混戦の中で、その判断を誤らせる。結果生じるのは、致命的なミス。手にした剣に、赤紫のライトエフェクトが宿る。放たれる剣戟は『細剣』スキルの上位技である刺突の連続攻撃、《スタースプラッシュ》。
凄まじいスピードの連続刺突。繰り出されるその紅い閃光が、俺の頬を掠め、左手の手甲に刺さり、俺のHPをじりじりと削っていく。だが、それはブロックの上から生じるわずかな削りダメージに過ぎないず、俺のHPを削りきることは無い。
そして最後の一撃を回避。ザザに訪れる、上位スキル特有の長い硬直時間。
焦りが生み出した、決定的な空白。
その時間があれば、俺は、この剣を砕ける。
振う手刀は、遠心力をたっぷり乗せた、《スライス・ブラスト》。
これが当たれば、あの剣は。
あの剣は。
「……っ…!」
瞬間、俺の意識が、激しくスパークする。脳裏に、ソラの笑顔が宿る。
だが、この手を止める訳にはいかない。そうすれば、今度決定的空白を作るのは俺自身。
ならば。
「っおおおおおっ!!!」
振り抜かれる、白銀の閃光。
《カタストロフ》を纏う手刀は、標的を過たずに斬り飛ばした。
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