暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/ONLINE
第十一話 閃光と弓兵
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いた。
刺青のように皮膚にしみ込んでいるそれは、紅く発光している。

「ほう、やはり君が私のマスターに違いないようだ。君は先ほど死にたくないと叫んだ。この世界には負けたくないと…。まあ、悪くない願いだろう。その願いの終わりまで共に歩み、共に闘うことをここに誓おう」

男はそう言うと私と視線を合わし皮肉っぽく笑った。
だが、私にはその声はろくに耳に入ってこなかった。
左手に刻まれた印の発熱。
それは徐々に強まり、今では耐えがたい激痛となって意識がだんだん遠のいてくる。

“手に刻まれたそれは令呪。サーヴァントの主人になった証だ。使い方によってサーヴァントの力を強め、あるいは束縛する、三つの絶対命令権。まあ使い捨ての強化装置とでも思えばいい。”

再度私の耳にあの声が聞こえてきた。どうにか痛みに堪えつつ、言葉に耳を傾ける。

“困惑しているであろう。しかし、まずは……おめでとう。傷つき、迷い、辿り着いた者よ。主の名のもとに休息を与えよう。君はここで晴れて「聖杯戦争」の参加者となったのだ”

……あらためて注意深くその声に耳を傾けるが、その声はどことなく癪に触る。
厚みをもった声は三十代半ばの男だろうか。

“おや、私の素性が気になるかね?光栄だが、そう大したものではない。なにしろただのNPCだ。私は君たちをサポートする存在にすぎない。気になるのであれば、第一層「はじまりの街」の西にある教会に来るといい”

どこの誰かもわからない。
その言葉をただただ私は聞き流す。
痛みと疲労によってもう精神が限界だった。

“それでは最後に私から言葉を送ろう。マスターに選ばれたプレイヤーよ「光あれ」”

だが私はその言葉を聞くと同時に疲労のためにその場に倒れこんでしまった。
そして眠るように意識を闇の中へ落としていった。

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

私は荒野に立っていた。

茜色に染め上げられて果てのない大地。

生物は何処にもおらず、風だけが吹き抜けていく。

そこには無数の剣が乱立していた。

持ち主はおらず朽ち果てていくのみの剣の群れは墓標のようだ。

いつの間にか剣の群れの中に剣でないものが混ざっている。

それは一人の男だった。

紅い外套を着た男が一人。

男は振り向かない。

後姿からでは男がどんな顔をしているのか、どんな表情をしているのか分からない。

その銀色の髪だけが風に揺れている。

視界の中、男は前を向いたまま歩き出した。


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ