第十一話 閃光と弓兵
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
狼はバックステップをしてそれをかわす。
が、
「心技泰山ニ至リ〈ちからやまをぬき〉」
剣を投げて無手になったはずの男の両手にいつの間にか同じように白と黒の双剣が握られていた。
そしてそれを再び投擲する。狼は横跳びにそれをかわす。
だがその時にはすでに三組目が投げられていた。
「心技黄河ヲ渡ル〈つるぎみずをわかつ〉」
狼はそれらをすべてかわし男に再び近づこうとする。
だが、次から次へと男の手からは剣が投擲される。
「唯名別天ニ納メ〈せいめいりりゅうにとどめ〉」
この男は何をしているのだろう。ただ無意味に剣を投げているだけにしか見えない。これではあの素早い動きをみせる狼には傷をつけることが出来ない。
「そんな心配そうな顔をするな。周りを見てみろ」
私はそう言われると辺りを見回す。
「……!!」
そこには今まで投げられた剣が飛び交っていた。
はじいたのと同じ数の双剣が彼を中心とした円状に散乱している。
「確かにあの獣の速度は脅威だ。まともに速度比べをすれば勝ち目はないだろう。だが速度で負けているのなら数で対するまでだ。こうまで囲まれればどうかな?」
男はそう言い、
「両雄、共ニ命ヲ別ツ〈われらともにてんをいだかず〉」
そう紡いだ。
白と黒の双剣がはじかれた様に飛ぶ。
いくつもの剣がお互いに引き合って集まろうとしている。
その集約点は円の中心、無数の白刃と黒刃が中心にいる黒き狼めがけて殺到する。
獣はこの場を切り抜けようとせまりくる剣戟をかわし叩き落とそうとするが、完全には防ぎきれず体表に傷がつく。
それでも剣は止まることなく狼を傷つけ続ける。
そしてついに“カオスヴォルフ”のHPバーはあと一本というところまできた。
だがその瞬間、黒き狼の姿が変わった。
黒かった体毛はさらに濁った黒へと変色し逆立ち始めた。
そして、今までよりもさらに速く動き、完全に剣戟をかわし始めたのだ。
黒き狼は剣の合間を抜き私たちの方へと突進してくる。
男は私を小脇に抱えると、人間には明らかに無理だと思うほどの距離を跳躍し、その狼の突進をかわした。
「む…これは少し予想外だな」
男は私を抱えながらそう呟く。
「どうするの?」
私がそう問いかけるが、男は皮肉っぽく笑うと
「なに、まだ範囲内だ。これぐらい対処できる」
そう言うと男は視線を再び飛び交っている剣に向ける。
剣はいまだに狼を傷つけようと殺到しているが、狼はこれをいとも簡単にかわす。
だが今度は全ての剣が狼に集まりだした。
狼は身を屈めてその剣劇を全力でかわそうとしている。だが、
「王手〈チェックメイト〉だ、消し飛べ。…壊れた幻想〈ブロークンファンタズム〉」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ