第十一話 閃光と弓兵
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眩い光が徐々に収まり始める。
魔方陣の中央で背を向けて立っているなにかは、ふと声を漏らした。
「酷い話だ。間違っても呼ばれるコトなぞないように祈っていたが、まったくの徒労とはな。抑止の輪はどんな時代でも働き者、というコトか。いいだろう、せいぜい無駄な足掻きをするとしよう」
紅い外套を着たその男は私に背を向けたまま何やら愚痴ると、視線だけを私に向けた。
「選定の声に応じ参上した。オレのような役立たずを呼んだ大馬鹿者はどこにいる?」
男は自分を卑下しながら私を軽く罵倒する。私はキョトンとしながら男を見つめる。
「ふむ。認めたくないが、この場にいる人間は君ひとり。念のため確認しよう。君が私のマスターか?」
「…マス…ター?」
「ん?君が私を呼び寄せたのではないかね?」
私は目の前にいる男の問いかけに沈黙する。
「はぁ…。どうやら今回はとんだ素人に引かれたらしい。ここまで私は幸運が低いとはな」
男は深くため息をつくとそうぼやく。
そんな態度にカチンとして思わず声を荒げる。
「あ…あなたいきなり出てきてなに…」
“ウォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!”
私が男の態度に口を挟もうとすると、今までほったらかしにされたのが気に喰わないかのように狼の遠吠えが聞こえた。
私はその遠吠えに身を縮めたじろぐが前にいた男はフッと軽く笑うと黒き狼に歩を進めた。
「いい機会だ。君の力で御しきれなかったあの獣を相手取ってやろう。なに、貧乏くじには慣れている。まずは思うままにこの力を振るわせてもらう」
男はそう言うと、
「投影準備〈トレース・オン〉」
そう呟きどこからともなく白と黒の双剣を取り出し両手に握っていた。
“グォォォォォォォォォォォォ!!!”
「フッ!」
黒き狼は前脚を振り上げ爪を突きたてるが、男は左手に持つ黒い剣で軽く受け流すと、
「フンッ!」
右手に持った白い剣で受け流した脚に切りつける。
“ゥゥゥゥオオオオオオゥゥゥゥゥゥ!!!”
狼は少し怯むが、切られたことに構わず逆の脚を男に振り上げる。
「ハァァァァ!!」
だが男の方もそれを先ほどと同じ様に受け流すと、再び足に切りつける。
“グガァァァァァァァ!!!”
悲鳴のような雄たけびと共に、狼は一歩下がった。
どうやら迂闊には近づかない方がよいと思ったらしい。
だが、男はニヤリと笑い、
「その選択は間違いではない…。だが、」
男はそう言うと手に持っていた双剣を飛ばす。私は何をしているのかと眼を見開くが、
「鶴翼、欠落ヲ不ラズ〈しんぎむけつにしてばんじゃく〉」
彼がそう呟くと投げられた双剣は円を描くように狼に接近する。
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