SAO編
episode6 虚ろな風と再びの火種3
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細剣が、敵の手に落ちてしまったことを。
そしてこの手甲が、PoHの一撃であっさりと砕かれたということを。
彼女はなおも、食いしばった唇の端から、絞り出すようにして言葉を続ける。
「……ありったけの素材使って、限界まで鍛えなおしといた、からっ! …こんっ、今度は! 今度は、絶対に負けない! 相手が魔剣でも、《友斬包丁》でも、PoHでも!!! アタシの武器は、もう絶対に負け、な、いっ、がらっ…っ!!!」
最後は、もう、言葉にならなかった。
彼女は最後にもう一度だけ、力無く俺の体に拳を叩き付けた後、立ち上がってアスナの胸へと飛び込んだ。そのまま大声を上げて泣きじゃくる。アスナが、その体をそっと支え、背中を撫でてやる。
彼女も、悔しかったのだろう。
お得意様で、俺よりも長い付き合いだった友人を失ったのだ。
そして何より、自分の作った防具が、彼女を守れなかった。
嗚咽を聞きながら、俺は残された《フレアガントレット》を手に取る。最後にキリトに放って渡した時は罅が全体に広がって今にも壊れて消えそうだったそれが、改めて見たそれは完全な輝きを取り戻し、ほのかに薄赤い火焔を纏ったような鮮やかな光を取り戻している。そして今、その手甲は、まるでそれ自体が燃え盛る様に、己の熱を俺に伝えてきた。
それは、もう二度と負けないという、意志無き手甲の叫びか。
それとも、涙と後悔、怒りと決意、己の全てを込めた、リズベットの思いの結晶か。
その炎は、俺自身の、枯れきった心に、再び…もう一度だけ、炎を灯す。
もう一度。もう一度だけ。
その意志が消えないうちに、俺は声を出す。
「……アスナ。条件がある。俺と、対戦してくれ」
思いの、全てを振り絞って。
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